インタビューほか

鶴田真由×海堂尊
「ゲバラは旅で成長した」

「オール讀物」編集部

『ポーラスター ゲバラ覚醒』 (海堂尊 著)

いまなおカリスマ的人気を誇る革命戦士の青春旅行を描いた海堂さん。ドキュメンタリー番組で、キューバを訪れた鶴田さんと、ゲバラの魅力、旅の醍醐味について存分に語り合った。

表現者としての小説家と女優

鶴田 ゲバラが成長する青春時代の旅を描いてみていかがでしたか?

海堂 ゲバラって楽しそうだな、の一言です。いい相棒と自由な時間、さらに豊かな感受性があれば旅は楽しい。鶴田さんも著書『ニッポン西遊記』の中で、基本は一匹狼なんだけど、その時々に一緒に行く人がいて、道行の魅力があると書いてらっしゃいますよね。まさに、『ポーラースター』の旅と同じだなと思ったので、今回も少しは楽しんでもらえたんじゃないかという気はしていました。

鶴田 ゲバラが旅で出会った人々――エビータ、相棒のピョートル、詩人のネルーダさんなど。魂と魂が出会って、それがどういうかたちに変化していくか。その魂の出会いの深さと意味が丁寧に描かれていたので、感情移入しながら、熱くなりながら読ませていただきました。そもそも海堂さんはいつからゲバラに関心を持ってらっしゃったのですか?

かいどうたける/1961年千葉県生まれ。医師・作家。2006年『チーム・バチスタの栄光』で作家デビュー。近著に『スカラムーシュ・ムーン』など。

海堂 医学生時代に古本で『チェ・ゲバラ伝』を読んでいたんです。内容などはすっかり忘れていましたが、「魅かれた」ということは確かでした。ここ最近、『チーム・バチスタの栄光』をはじめとする医療小説の世界が、一区切りつきそうだということもあって、いっそ小説を書くことを止めてもいいかなぁ、なんて考えていたんです。

 そこへ、今のオール讀物の編集長から『チェ・ゲバラ伝』の増補版が届いた。さらに、NHKの番組で、中篇小説を書いたけれども番組では使われずボツになり……。

鶴田 それはもったいない。

海堂 その中「コマンダンテの海」を2012年の『オール讀物』に掲載してもらった。それから昨年前半は、中米7カ国縦断ツアー、クスコ・マチュピチュツアーに、チリ縦断ツアー、メキシコ・コロンビア・エクアドル取材旅行と、中南米に行きまくりました。そうしてゲバラの人生の軌跡をたどったんです。

鶴田 今作ではゲバラが生まれたアルゼンチンを始め、チリ、エクアドル、コロンビア、ペルー、ボリビアなどを描いていますが、それぞれの国の空気感が見事に描かれていると思いました。

海堂 埃まみれの乾いた風が吹き抜ける感じを書いたつもりでも、それが描けているかどうかは、自分ではわからないので安心しました。

鶴田 一見平和そうに見えていても、一歩間違うと危険というような緊張感も浮かび上がってきました。

海堂 鶴田さんも、ご自身が映画やドラマに出演されていて、自分がどんな演技をしているか分からないこともあるんじゃないですか。

つるたまゆ/神奈川県生まれ。女優。近年はドラマ「株価暴落」、映画「64-ロクヨン」「マザーレイク」などに出演。

鶴田 ええ、ありますね。「もうちょっとできていると思っていたのに」とか(笑)。

海堂 小説家がいいのは、なんども書き直しができることです。映像や舞台はそれができないからむつかしいでしょう。

鶴田 かかわる人数も多いですし、解釈が一致しないこともありますから。海堂さんは、書き直すこともされるんですね。

海堂 しますよ。連載中でも、小説のゴールは見えているんです。でもこのゴールまでをどう描くか、書きすすめないと分からない。いったん書き終えて編集者に渡した後に、2週間くらい作品から離れるんです。そうすると、「得意げに書いているけど、全然効果的じゃないな」という部分が見えてくるんです。今回は参考文献を700冊近く集めまして、まだまだ増殖中です。読んだのは3分の1、200冊くらいなんですが(笑)。まあ、シリーズを書き終えるまでには読破したいなぁ、と(笑)。今でも新しく1冊読むと新しい発見があってその都度修正したり……。たとえるなら、サグラダファミリアの建築のようにどんどん付け足して、不要なところはカットしていく、というイメージです。

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ポーラースター ゲバラ覚醒
海堂尊・著

定価:本体1,750円+税 発売日:2016年06月11日

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オール讀物 2016年7月号

定価:980円(税込) 発売日:2016年06月22日

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