徳川夢声は元祖マルチタレントとでも呼べばいいのだろうか。
戦前の文藝春秋の菊池 寛の社長室には久米正雄、直木三十五、横光利一、佐藤春夫、川端康成、尾崎士郎、吉川英治といった作家のほか、歌舞伎俳優、競馬関係者、棋士といったはなやかな顔ぶれが始終訪れていたが、徳川夢声もそのひとりだった。
明治二十七年(一八九四年)生まれ。無声映画の弁士となるが、昭和に入りトーキーが登場すると、漫談や演劇に転じた。NHKラジオ「宮本武蔵」(吉川英治作)の朗読で人気を博し、「週刊朝日」の連載対談「問答有用」は多くの人々に親しまれた。文筆にもすぐれ、昭和二十四年(一九四九年)には直木賞候補にもなっている。
昭和三十年に第三回菊池寛賞を受賞しているが、その理由は、「各方面における活動」。写真は昭和三十一年三月、菊池 寛の墓参りをする徳川夢声。
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