今年で、作家デビュー十年になる堂場瞬一さん。スポーツ小説『8年』で小説すばる新人賞を受賞し、その後、警察小説「鳴沢了」シリーズは累計百五十万部という大ベストセラーとなった。堂場さん文春初登場となる『虚報』は新聞記者を主人公にした意欲作。堂場さんに本作への思いを聞いた。
──新聞記者を主人公にした小説を刊行するのは『虚報』が初めてだと思います。今回、この職業を題材に選んだ理由を教えて下さい。
堂場 失敗をテーマにした小説を書きたかったんです。人はどんな職業でも失敗をしますよね。その過程をじっくりと書きたかった。失敗は、「攻めているときの失敗」と「守りにいくときの失敗」があります。新聞記者は、この二つの失敗がすぐに判明する職業だと思います。特ダネのつもりで書いていて、間違えてしまうという「攻めの失敗」、抜かれるという「守りの失敗」ですね。
──「失敗」とは、ずっと考えていたテーマだったのですか。
堂場 「失敗の研究」というフレーズだけが頭の中をぐるぐる回っていたんですよ。どんな小説も主人公は失敗しますよね。それが挫折となり、乗り越えていくというのがひとつのパターンです。しかし今回の小説は、失敗したまま終わってしまうというか、失敗を素材のまま提示してしまおうと思った。安易な救いを作らないで、素材を丁寧に描き、あとは読者に考えてもらおうと思いました。考えてみたら、最初から最後までひどい話なんですよね。