──まず、週刊誌がスクープして新聞が追いかけますね。それにテレビも絡んでくる。マスコミそれぞれの取材の仕方なども面白く読みました。
堂場 私も週刊誌に抜かれたことがありますが、これは凹(へこ)むんですよ。こちらは毎日出しているのに、なんで週一回しか出ない雑誌に負けるのかと。ただ、それも十年以上前のことです。最近、週刊誌も特ダネが少ないかな、と思っていて、週刊誌に対するエールの意味も込めて書きました。事件取材は週刊誌も難しくなってきていると思うのですが、ただ、インターネットでは、事件ものは相変わらず人気があります。新聞も週刊誌も古いメディアですから、だいたいパターンが決まっていますよね。ここでどう新しい切り口をみつけるか。いまのメディアに対するメッセージが込められています。
「失敗のポイントは外していない」?!
──タイトルについて伺います。『虚報』とはあまり馴染みのない言葉ですが。
堂場 普通は誤報ですよね。虚報は、よりでっち上げに近い。本書で扱った記事は、でっち上げというのはちょっと言い過ぎかもしれません。しかし、誤報のレベルではないと思っています。書く人間の思い込みが強く、一方的に正しいと解釈して書いてしまった記事。これは僕の基準では誤報とはいえません。ある意味、誤報より悪質です。
──「信じたい」という思いが勝ってしまった失敗ですね。
堂場 そこが失敗の本質ですね。これは情報産業に携わっている人間にとっては致命的です。
──失敗に突き進んでいく記者の焦りが、痛いほどリアルに伝わってきます。
堂場 だから、書いているときは暗かったですよ。例えば、スポーツ小説で、ピッチャーの調子が悪くなっていくのを書くのとは全く違う。メンタルな問題だけに、重かったです。ただ、どうやって失敗するかが今回の要諦でしたからね。功名心、リカバーしたいという気持ち、若気のいたり、経験のなさ、肝心なときに肝心な人がいないこと等々、失敗のポイントは外していないと思います。
──失敗を知ることで、落とし穴を避けることができるかもしれません。
堂場 まさに。これは、新聞記者を主人公にしたサラリーマン小説です。働く男たちの小説です。読者の方は、これを読んで、落とし穴に嵌(はま)らないようにして頂きたい(笑)。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。