- 2010.10.20
- 書評
人生を選択する瞬間
文:森 健 (ジャーナリスト)
『ぼくらの就活戦記――難関企業内定者40人の証言』 (森健 著)
出典 : #文春文庫
ジャンル :
#政治・経済・ビジネス
大学生の新卒採用が社会問題になって久しい。学生の内定率は卒業間近の三月になっても八割と、五人に一人が就職先を見つけられない事態になっている。菅政権でも学生の雇用対策は重要政策の一つとして掲げられている深刻ぶりだ。
ところが、そんな若年層の雇用に関する取材を重ねる過程で、筆者はおかしなことに気がついた。五〇社、七〇社とエントリーして失敗している学生が大勢いる一方で、複数の有名企業に「辞退」を申し入れている学生がいる。
では、就活戦線を勝ち抜いた学生はなぜ、どのように活動をして、内定を獲得することができたのだろうか。
そんな疑問から、人気企業に協力を依頼し、内定学生や入社一~三年目の若手社員に登場してもらい、就職活動の詳細を語ってもらうことにした。それらをまとめたのが、本書『ぼくらの就活戦記』である。
登場するのは一五社四〇名。JTB、JR東海、三菱東京UFJ銀行、伊藤忠商事、明治製菓、ソニー、東京海上日動火災保険、テレビ朝日、ベネッセコーポレーション、キリンビール、NTTドコモ、スズキ、電通、東レ、ゴールドマン・サックス。
尋ねたのは、きわめてオーソドックスなことだ。いつ頃から将来を考え、どのように就職活動を始め、面接ではどのような質問をされ、どのように答えたか。活動中に印象深かった出来事はどんなことで、自分が選ばれたのはなぜだと思うか。
彼ら彼女らのストーリーは、それぞれたいへん魅力的だった。
鋭い「深掘り」面接の結果、自分でも意識していなかった挫折体験に気付かされた東京海上日動火災内定の男子学生。経済的に厳しい家庭ながら、デパートのアルバイトで接客業の経験を身につけるなど自身の成長に役立て、勉強にも注力した明治製菓内定の女子学生。志望先選定や面接対策として欠かせない自己分析をやるために、深夜に机の灯りだけつけてひたすらノートに書き込んでいったのはJR東海の男性社員だ。
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