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ただ一人だけの存在

「本の話」編集部

『八千草薫』 (文藝春秋 編)

出典 : #本の話
ジャンル : #ノンジャンル

 一昨年のいつだったか、

「君、八千草薫さん、知っているよね?」

 という質問からこの写真集は動き出しました。

 もちろん、「宮本武蔵」のお通やテレビの「岸辺のアルバム」に「うちのホンカン」などで知ってはいました。が、少し調べてみると、出演した映画は100本以上、テレビは70タイトル以上、舞台でも同じ位に立ち、2012年にも出演する映画やドラマがあるという、こちらの想像を超える女優だったのです。

「来年80歳になるようだから、記念に写真集を創れないかなぁ」

 八千草さんの写真集は今まで1冊もなく、10年前にエッセイ集が出たっきり。1947年に宝塚歌劇団でデビュー、今もテレビで見ない年はない、という長いキャリアを思うと少々不思議な感じがしたものでした。

 はじめて企画を説明するためお目にかかった折、

長く続けてればいいってもんでもないでしょ。私そういうの、あまりすきじゃないのよ(80になったからってだすというのは)。だいたい売れるのかしら。

 これは無理かなとあきらめ気味にその時は一通りお話をして退散した次第でした。事務所から「あの企画進めましょう」と連絡が入ったのはそれからしばらくたった頃でした。

 東京西郊にあるご自宅へお伺いして、サンルームに入ると、山積みとなったアルバムの山の数が8つ、9つ。そして写真が入っていると思しき袋がこれまたうねうねと山脈を作っているではありませんか。

 ガラス張りのサンルームは日当たりもよく、庭には大きな欅の木や、製作中のビオトープを眺めることができました。

 また何10匹というスズメの賑やかな声。なんでもえさ台を置いているとか。明らかに街中で見かけるスズメより栄養状態がよいような。

 この居心地の良いサンルームで、写真を選びつつ、八千草さんの話を聞くというのは、終戦後から今に至るショウビジネスの世界を垣間見ることができ、趣き深いひとときでありました。

【次ページ】宝塚、そして映画、テレビの世界へ

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