「さしいれ」の力は偉大です。
撮影現場にさしいれが届くと、緊張した空気が一瞬のうちに柔らかくほぐれます。
そしてまた、みんなで一緒に食べていると、自然と会話がはずみ、お互いの心が近づき、結果的に良い仕事を生み出すことにもつながるような気さえします。
だから私はさしいれをするのが大好きで、日々、おいしいお菓子や食べ物を探して、情報をストックしています。
誰かにいただいて感動したものや、地方に仕事に行ったときに出合ったもの、デパートやスーパーで、撮影現場の雰囲気や誰かの顔を思い浮かべながら選んだものもあります。
「この上品な餡の味、和菓子好きなあの人におすすめしたい」
「これなら気兼ねなく手に取って、ポケットに入れてくれそう」
「この変てこなパッケージ、飛びつく人いるだろうな~」
などとあれこれ妄想している時間も、とっても楽しいんです。
「手土産」ではなく「さしいれ」
この本は、そんな私のさしいれリストを厳選したものです。ベースとなっているのは、女性誌「CREA」で2009年夏から1年8カ月にわたり連載した「今月の差し入れ」全20回分。
連載のきっかけは、2008年の同誌の“贈り物特集”のインタビューでした。贈り物全般の話をする中で、仕事柄、撮影現場へのさしいれに気をもむことが多いという話になって。立ちっぱなしの現場だと個包装がいいとか、さらにポケットに収まる小ささが望ましいとか、でもポケットでペチャンコになるような柔らかいものはよくないとか……。数が少ないと遠慮する人がいるとか、冷蔵庫がない現場もあるとか……。とかくさしいれはTPOというか、現場ごとの状況判断が必要で奥深い、という話に共感した編集さんが、連載を提案してくれました。
広い意味では贈り物なんだけど、「手土産」とは微妙に異なる「さしいれ」について、私自身も知りたいし、周囲のみんなも興味を持っていたので、よし、じゃあ「さしいれ」について集中的に考える連載にしよう! ということになりました。
毎月5品ずつ、自分なりにテーマを設定して選んでいたのですが、これまで何度もリピートしているお気に入りのものや、直近にいただいたものなどを紹介することもあれば、しっくりくる5品がなかなか揃わず、デパートに駆け込んだことも。
実は、「これ、よさそう」と思って買って食べてみたけれど、掲載にいたらなかったものもたくさんあるんです。1回の撮影で、10品以上食べて苦しくなったこともありました。
最終的に掲載したのは、私が実際に食べて「おいしい」と感じ、読者のみなさまに自信を持っておすすめできるものばかり。
本にすることが決まって、連載を見返してみたら、甘い物からお酒のつまみ、老舗の味からB級グルメ的なものまで、どれも自分が大好きな味ばかりで、自画自賛したほどです。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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