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果てしない食の旅

果てしない食の旅

文:畑 正憲 (作家)

『ムツゴロウの地球を食べる』 (畑正憲 著)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #随筆・エッセイ

 番組の性質上、野生動物と付合うことが多く、レストランなどない、僻地に長く滞在した。私は、日本食など持ち歩かないので、現地のものを食べた。トウモロコシの団子を食べる日が続くと、幼い頃の開拓団を思い出した。

 帰りには、トランジットで都会に寄る。パリやロンドン、ミラノ、ローマ。そのような所では、超豪華なレストランに出没した。何回も何回もそのような経験をして、料理というものが、いくらか分かりかけてきた。

 一人で旅をするようになって、台所つきのレジデンスホテルを選ぶようになった。調味料は、持って行く必要はまったくなかった。今、世界中どこへ行っても、MISOやSYOYUは手に入る。

 昼過ぎ、ぶらりと買物に出る。スーパーで、その日食べるものを選ぶのが、大きな楽しみになった。

 大きなスーパーの近くを探すと、新鮮なパスタを売る店が容易に発見出来た。そして、そのような店には、さまざまなソースも用意されていた。持ち帰り、ガーリックなどをちょい足しして、目まいがし始めるまで、食べに食べる。

 この世に生きている意味。

 地球につながっているんだという実感。

 それは、このような時間の中にある気がしている。絶望だってする、もがきもするのが人生だけど、美味しいものをたら腹食べた後には、けだるさと、ハッピーな感じが残るだけ。そう思う。

 家でも、台所に立つ。すると女房は、あなたの手つきは、解剖みたいよと笑う。

 科学を学んだ部分は、いくつになっても消しようがないみたいだ。トリュフだって自分で掘り、とことん食べてみたくなる。キングサーモンの料理だって、自分で釣り上げ、各種の料理に挑戦した。フライパンを使用し、温くんまでこしらえた。

 アマゾン。その下流から上流まで。

 アフリカ。北から南へ。

 そして大インド。

 私はチベットのヤルツァンポ河ぞいに国境まで旅し、機会を改め、その国境からアルナチャールプラデッシュを約一と月かけて徒歩で下り、ブラマプトラと名称を変える川のほとりを、アッサムまで旅している。

 いろいろなものを食べた。

 インドのワニ料理はすご味があった。

 南アフリカは、うまいものだらけという思い出がある。

 その土地、その土地に、ものを美味しく食べる文化があった。

 語っても、語っても、終わりがない気がしている。その第一球がこの本である。私は、まだまだ、語り続けたいと思っている。

ムツゴロウの地球を食べる
畑 正憲・著

定価:560円(税込) 発売日:2011年02月10日

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