しかし、ルーズな本性は隠し通せないもので、「本当に本当にごめんなさい。次は必ず遅れないから!」と、毎度同じセリフをN島クンに言っては、彼を呆れさせておりました。
ああ…幻滅されてるなぁ…と自分でも自分に落胆しつつ、半年くらい経ったある日、あと3分で玄関を出なければならないのに、私はまだ化粧を始めたばかり…
「ごめん…あと10分…いや、7分下さい…」
すると、とっくに支度が終わっているN島クン、
「うん、わかってる。えり子には、15分のバッファを持たせてるから」
…???
私は何かを持たされているらしい。「バッファ…?15分…??」
N島クンは、さっぱりとした顔で、
「バッファというのは、処理速度などの差を補うためにデータを一時的に保存しておく記憶領域のこと。
例えば、パソコンからプリンタにデータをどんどん送ると、データ転送より印刷のほうが遅いから、
プリンタの方に一時的にデータがたまるでしょ―それがバッファ。
えり子を見てると、遅れる時間はきっかり15分。それ以上でもそれ以下でもない。
ということで、『えり子は処理の遅いプリンタのようなもので、行動には15分のバッファが必要』、と思うことにしたんだ。
今日の予定時刻も、『15分遅れてちょうどいい時間になる』ように設定してあるから、大丈夫」
幾度と無く待ちぼうけをくらわされていたN島クン、
自分のストレス回避にこんなことを考えて、しかも先手を打っていたとは…!
私はずっと勘違いしていました。
私の花婿さんは、「自らの頭がパソコン」なのではなくて、
「つねにパソコンを操ってる思考回路の人」でした。
なんでもかんでも自分の分野に変換する、理系クン・N島。
ちゃんと夫婦できる…かな?
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