書評

異端の指導者と連敗野球部

文: 横田 増生 (ジャーナリスト)

『県立コガネムシ高校野球部』 (永田俊也 著)

 型破りな高校野球小説である。

 物語は、正月明け、雪深い信州にある県立高校の野球場にヘリコプターが着陸することで幕を開ける。

  ヘリコプターから降りてきたのは、金色のピンヒールに、超マイクロミニをはいた小金澤結子(こがねざわゆうこ)である。東大出身の30歳で、一部上場企業のトップとなった女性経営者は、その攻撃的な経営姿勢から、世間では、“女信長”や“平成のジャンヌ・ダルク”などと呼ばれるやり手である。

 その小金澤が自分のグループ会社を地元に移転させる条件として、この進学校の野球部の部長に就(つ)いた、というのだ。

 小金澤は目を丸くしている野球部員たちにこう言い放つ。
「最初に言っておく。今年の夏、あんたたちに甲子園に行ってもらう。それが、あたしがここにきた理由」

 県立コガネムシ高校は、県下で有数の進学校でありながらも、野球に関してはからっきしダメな学校だった。ここ数年の県大会では、いつも1回戦で敗れ去っている。部員たちも、野球は受験勉強の合間の息抜き程度にしか思っていない。
 しかも、甲子園に出場するには、半年後に控えた夏の県大会で、5年連続優勝中の県下の名門校を倒す必要があった。どう考えても無理な話である。

 しかしこの県下の名門校を倒すことこそが、小金澤の本当の目的だった。

 それは高校野球の部長に就任する数カ月前のこと。小金澤は、経営難から身売りを表明したプロ野球チームの買収に名乗りを上げる。しかし、プロ野球界を牛耳(ぎゅうじ)るドンが、成り上がりの女性経営者に、プロ野球チームの経営は任せられないとして立ちはだかり、別の企業への売却が決まる。

 それまでビジネスの世界で連戦連勝を続けてきた小金澤にとって、はじめての敗北だった。そのドンのお気に入りの孫が、県下の名門校のレギュラーであり、その名門校を打ち破ることで、ドンの鼻を明かすために弱小チームの部長におさまったというのだ。

 小金澤は、これまで身に付けた経営手腕と豊富な資金で、優勝を目指そうとする。

県立コガネムシ高校野球部
永田 俊也・著

定価:700円(税込) 発売日:2011年08月04日

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