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戦後を代表する女形、六代目中村歌右衛門

戦後を代表する女形、六代目中村歌右衛門

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 昭和二十六年(一九五一年)、戦災から甦った第四期の歌舞伎座開場から四ヶ月目に襲名興行を行った六代目中村歌右衛門。この写真は、まだ芝翫(六代目)を名乗っていたその前年に撮影されたものである。

 戦後を代表する女形と謳われたこの名優は、大正六年(一九一七年)、五代目歌右衛門の次男として誕生した。五歳で初舞台を踏み、昭和八年に福助、昭和十六年には芝翫を襲名。

 父の死後、苦難の時期もあったが、歌右衛門を継いでからは、「京鹿子娘道成寺」の白拍子花子、「籠釣瓶花街酔醒」の八ツ橋などを当たり役に、昭和歌舞伎界のトップに君臨する。芸術院会員、人間国宝、文化功労者に選定され、昭和五十四年には文化勲章を、平成八年(一九九六年)には勲一等瑞宝章を受章した。

 最後に歌舞伎座の舞台へ上がったのは、その平成八年四月、「井伊大老」のお静の方。平成十三年三月三十一日、その華麗なる人生を閉じた。享年八十四。

 納骨の日、子息の梅玉、松江兄弟が休館日だった歌舞伎座へ遺骨を持って挨拶に赴くと、舞台には「道成寺」の絢爛たる舞台装置が思いがけずも飾られていたという。

〈途端に三階から「成駒屋!」「大成駒!」「日本一!」の声がかかる〉(関容子『歌右衛門合せ鏡』)

 六代目の兄の孫である福助(九代目)による七代目歌右衛門襲名披露興行は、先ごろ再開場した第五期の歌舞伎座をはじめとして、平成二十六年(二〇一四年)三月から行われる。

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