2010.01.20 インタビューほか

京都の裏支配者“白足袋族”の実態

「本の話」編集部

『回廊の陰翳』 (広川純 著)

京都の裏支配者“白足袋族”の実態

──松本清張賞受賞作『一応の推定』はご自身の職業であった保険調査員が主人公でしたが、『回廊の陰翳(かげ)』では伝統宗教(仏教)の巨大教団腐敗がテーマです。探偵役を務める主人公も、一方は若い僧侶であり、もう一方は京都の所轄の刑事です。デビュー二作目をこのようなテーマ、主人公で書かれたのはなぜでしょうか。

広川  初めて書いた小説で幸運にも清張賞を受賞することができ、受賞第一作でもまた保険をテーマに書くという選択肢もあったわけですが、作家生活を続けていくにはこのまま保険だけでいいのかという思いもあって、もっと別の世界を書いてみることにしました。自分の限界を超える新たな可能性に挑戦したいと思ったまではよかったのですが、何を書けばいいのか見当がつかない。担当の編集さんといろいろ相談しているうちに、「広川さんは京都のご出身ですから、京都人しか知らない京都を書いてみたらどうですか」と言われて心が動きました。 

京都を裏から支配する“白足袋族”

──「京都人しか知らない京都」が、なぜお寺やお坊さんの世界なのでしょうか。

広川  京都には昔から「白足袋族」という言葉があります。僧侶や茶人、学者、西陣の織物の老舗(しにせ)など、政治的な権力者ではないけれど隠然たる影響力を持った裏の権力者たちのことで、京都の庶民は「白足袋族には逆らうな」といった言い方をします。京都で有名なお寺を拝観する観光客は表の顔しか知りませんが、地元の人間は僧侶たちの裏の顔を見ていますからね。私も十五年ほど前、保険調査員の仕事で祇園のクラブに通いつめたことがあったのですが、坊さんたちが変装してお店に通うのを何度も目撃しました。みんな変装して普通の服装で現れるのですが、全員頭が坊主なのですぐわかってしまいます(笑)。

回廊の陰翳
広川 純・著

定価:1750円(税込) 発売日:2010年01月28日

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