こうしたアップルに対抗して、グーグルはデジタル・コンテンツの販売サービス「One Pass」の詳細を発表した。それによると、コンテンツ提供者がグーグルに支払う手数料は10%で、アップルの手数料30%の3分の1に過ぎない。グーグルのエリック・シュミットCEOは、この手数料は運営コストをまかなうためのものであって、「基本的にこのサービスからの儲けは考えていない」「もっとも大切なことは、高品質のコンテンツを生み出している人たちにお金を渡せるようにすることだ」と語ったという。
アップルの「iBook Store」、グーグルの「Google ebookstore」、アマゾンの「Kindle Store」のサービスはまだ日本では始まっていないが、こうしたルールが電子書籍市場で一般化していくとどうなるだろうか?
プラットフォーム側はいつでも勝手にルールを変えられるので、プレーヤー(出版社などのコンテンツ提供者)はそのルールに適応しないと生き残れなくなってしまう。これは出版社ばかりか、著作者、ひいては読者にも大きく影響するデジタル革命の一部分なのである。それなのに、日本の出版業界では、昨年「電子書籍元年」とあれだけ言われたにもかかわらず、いまだに混乱が続いている。新時代に対応する著作権の整備、日本独自のメガプラットフォームの構築など、問題は山積したままだ。
年々歳々、出版不況は深刻化し、出版社は赤字経営に陥り、書店数も減っている。新聞も毎年100万部単位で部数を落としている。これはプリントメディアに限らず、テレビなどの電波メディアも同じ状況だ。
代わって、ツイッターやフェイスブックなどのネットのソーシャルメディアが台頭してきている。このまま既存メディアが従来の方法を守りながら、新しいネットメディアとして生まれ変われる可能性は低い。
本書で私は、できるかぎり平易に、このデジタル革命がなにをもたらすのかを、自分の体験を含めて描いた。その結果、見えてきたのは巷間言われているのとは違う「暗澹(あんたん)たる未来」だった。
「暗澹たる未来は山田さんの編集の得意分野でしょう」と作家の藤井耕一郎氏は、褒め言葉か皮肉かわからないメールをくれた。その私が、自分自身でそれを書くことになった。私の本音は、本書の「おわりに」にある。じつは、私はできるならデジタル生活などしたくない。毎日、PCやケータイを使う生活に、もううんざりしている。
いまこの時点でも、記者、編集者、書店営業、広告営業、書店員などの方々は懸命の努力を続けている。それを思うと、本当に心が痛い。この状況がもう少し整理され、もっと明るい未来が見えたとき、もう一度、続編を書いてみたいと思っている。ただ、そんな未来は来るのだろうか?
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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