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自由を求めて書き続けた「無頼派の教養人」石川淳

自由を求めて書き続けた「無頼派の教養人」石川淳

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 石川淳は芥川賞草創期の小説家だ。深い学識とともに戦前から親しんだアナキズムの思想をもとに、つねに現代社会への批判精神を持ち続けた人である。

 明治三十二年(一八九九年)、東京に生まれる。慶応義塾大学予科、東京外国語大学の仏語科に学び、横須賀海軍砲術学校、慶応義塾、旧制福岡高等学校などの仏語教師を歴任するが、左翼的な学生運動に関わったとされ、大正十五年(一九二六年)、退職を余儀なくされる。以後、翻訳や創作に携わり、昭和十一年(一九三六年)「普賢」で第四回芥川賞を受賞。しかし昭和十三年に「文學界」に発表した「マルスの歌」が発禁処分となるなど、創作に不自由な時代が続く。

 戦後になるや「焼跡のイエス」「処女懐胎」と旺盛な作家活動で、「無頼派」作家として人気を博する。中国の文化大革命を批判するなど、自由を希求する精神は一貫していた。

 奇想天外ともいえる作風が、七〇年代の若者の心を掴み、リバイバルブームも起きた。晩年まで旺盛な創作活動を続け、昭和六十二年、八十八歳で、「蛇の歌」連載中に没する。写真は昭和五十七年二月に撮影された。

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