- 2013.04.19
- 書評
「自分の味」を育てる4つのコツ
文:大原 千鶴 (料理研究家)
『京都・大原さんちの台所塾 わたしの十八番レシピ帖 [定番もの]』 (大原千鶴 著)
ジャンル :
#趣味・実用
私が料理教室をはじめて4年が経ちました。料理教室の生徒さんたちから、
「作るたびに味が変わってしまう」
「自分の味が決まらないんです」
そんなご相談を受けることが度々あります。レシピ通りには作れても「自分の味」が定まらないと、みなさんお悩みのようなのです。それじゃあ、私の「自分の味」ってどんな味だろう?
と改めて考えてみました。
私の「自分の味」はこうして生まれた
私が生まれ育ったのは京都の奥山。野や川、田畑の生命力あふれる素材の味に親しんで育ち、大人になって、留学や仕事や旅先で触れた外国の味を覚え、結婚後は、京都の街中にある嫁ぎ先の味を身につけ……と、年齢を重ねて経験と出会いをからめ、見て聞いて、覚えた味を少しずつ蓄えてきました。
そうやって小学生の頃から30年近く、山ほど料理を作ってきたわけですが、10年20年とずっと作り続けている料理がある一方、おいしくてもいつの間にか作らなくなった料理もあり、と自然とふるい分けられているのですから、おもしろいものです。
大切に作り継いできたレシピは、特別でない、いつもの料理ばかりです。気づけばいつもの日のふつうのごはんが、日々の出来事としっかり結びついていました。
運動会だからお誕生日だからと作る子どもたちの好物に、お弁当にせっせと詰めてきたおかずがあり、ありあわせの材料で作ったごはんにほっとなごむときがあって……。
「また、あれ作って」と言われたうれしさを杖にして、繰り返し作って、繰り返し食べてきた、体になじむ料理。それこそが「自分の味」なのだろうなあと思います。
そんな「自分の味」を育てるには、4つのコツがあります。
その1
作る前に必ず、料理の仕上がり(食感、味、盛りつけ)をクリアにイメージしましょう。
その2
おいしさにはスピードも大事。料理中は手の動きを自分なりに速くするよう意識しましょう。
その3
基本調味料の銘柄をあれこれ変えると味が定まりません。わが家の定番の調味料を決めましょう。
その4
自分の好きな味つけを覚えましょう(味つけはできるだけ比率で覚えて)。
ここで大事なのは、本のレシピは絶対ではなく、「ものさし」として使ってほしい、ということです。レシピにしたがって何度か作ったら、
「もう少し甘くてもいいかな」
「唐辛子を増やして辛めにしよう」
こんな風に、自分の好きな味つけをこのレシピに加えてみてください。
自分の味の好みや、家族の声をレシピに反映することによって、この本のレシピは、本当の意味であなたの「自分の味」に成長していきます。
自分の「おいしい」を信じて!
そんな「自分の味」を育てる一番の近道はなんだと思いますか? それは、日ごろから食いしんぼうであることです。いろんなものを食べて、自分が「おいしい」と思う感覚を信じて、料理をする時だってどんどん冒険していいのです。なにしろ「おいしいは自由」なんですから!
今回、この本では、最も私らしい味である十八番レシピの中から、なんでもない普通の日に登場する、定番料理を紹介させていただきました。毎日のごはん作りにすぐ役立つだろうと思うことを、「台所塾」らしく、気さくに、わかりやすく綴ってあります。
各料理には、レシピが生まれた際のエピソードや食べてくれる家族の評判などを小さなエッセイにして収録してみました。また、昔の定説にしばられず、しょっちゅう作って見いだした工夫やコツは一口メモとして掲載しました。ぜひ、本をめくり「これ、うちの定番にしよう」なんて楽しんで使ってみてください。レシピの中で、繰り返し作り続ける料理が増えて、だんだんそれぞれの「自分の味」が育ってくる。そんな時に、たくさんの台所で、この本が楽しく「自分の味」を生み出す助けとなったら、何よりうれしいなあと思います。
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