首都圏を中心に全国に56店舗を展開する女性に人気の「食べるスープ」の専門店チェーン「Soup Stock Tokyo」が、初のレシピ本を出版。その背景を、創業社長である遠山正道氏に聞いた。
※遠山正道社長からメッセージを動画で頂きました。インタビュー記事の最後をご覧ください。
――「Soup Stock Tokyo」の第一号店ができたのは、99年でしたね。
遠山 今年で「Soup Stock Tokyo」は13年目です。駅への出店が多いことからもお分かりいただけると思いますが、もともと、スピードの速い都会で生活する人たちに、スープを飲んでほっとしていただくような場所を提供したいと思って「Soup Stock Tokyo」を立ち上げました。
――お客さまはどういう方が多いのですか?
遠山 スープは0歳から100歳まで、すべての方に召し上がっていただける食べ物なので、あえてターゲットは設定していなかったのですが、実際には女性のひとり客の方が多いです。8割くらいでしょうか。女性がひとりで入れるお店は少ないので、女性ひとりでもゆっくりとくつろいでもらえるお店にしたいと思ってきました。
――外食チェーンとして、成功を収めてこられた「Soup Stock Tokyo」が、レシピ本や“中食”に関心を持たれた経緯は?
遠山 「Soup Stock Tokyo」を始めて数年もたつと、当時OLだったお客さまも、我々のスタッフも一緒に年をとり、結婚して子供もできて……、とライフステージが変化してきました。また、世の中の大きな流れとしても、外でバリバリ働くだけじゃなくて、おうちでゆっくりとか、家族と一緒に……ということが大事にされ始め、我々自身もそういったライフスタイルを身近に感じるようになってきたのです。そこで、家で家族とゆっくりスープを食べるというシーンも一緒に作っていけたらなあ、と思うようになり、その第一弾として、冷凍スープの販売を開始しました。
――それは大きなご決断ですね。
遠山 大きなコンビニチェーンですら、冷凍ゾーンでは、氷か夏のアイスクリームか冬の鍋焼きうどんくらいしか売れない……といわれるほど、冷凍ジャンルはそもそも弱い。その上、温かいスープを出すお店で冷凍スープを扱うのってどうなんだろうとかコスト面の不安とかいろいろありました。でもまずは冷凍庫を作ろうと、木の棚でできた「本箱」のような冷凍庫をいちから作って、店舗に置いたところ、思いのほか売れ行きがよかった。その後、通販や百貨店でも扱ってもらえるようになり、店舗でも冷凍スープが全体の売り上げの二割を占めるところも出てきたので、昨年、冷凍スープだけの専門店「家で食べるスープストックトーキョー」も出店しました。とはいえ、私自身、冷凍スープだけのデパ地下の店なんて……、と最初は疑心暗鬼だったのですが、蓋を開けてみれば非常に好調で、これは自分でもびっくりしました。
――それはなぜなんでしょうか?
遠山 やはり、家庭で食べるということが見直されているのかなという気がします。実際、うちのスタッフでも男子がお弁当作ってくることも多いですし、家で作るということが身近になっている。とはいえ、今みんな奥さんも共働きで、疲れて帰ってくるから、手間をかけずに、あったかいものを食べて、家族で会話したい。そんな方たちに冷凍スープは受け入れられたんじゃないかと思います。そして、冷凍スープもいいけれど、3回に1回は、自分で作ってもらうのもいいんじゃないか、それによって家庭のコミュニケーションの場にかかわることができたら、という思いから、今回レシピ本を出すことにしました。
――オマール海老のビスクとか、東京ボルシチとか、「Soup Stock Tokyo」さんの看板メニューのレシピも惜しみなく公開していただいて、ここまで公開しちゃって大丈夫なの? という気にもなりますが(笑)。
遠山 隠すものは何もないので(笑)。逆に、スープって時間をかけてていねいに作らないと駄目なんだなあとか、そういうことを理解してもらえればと思います。私自身、よく通っている大好きなお店がレシピ本を出したので、そのレシピを自宅で作ってみたら、やっぱりお金払って食べにいったほうがいいな……という結論に至ったこともありましたし(笑)。
――本を作るにあたって意識されたことは。
遠山 シンプルでありながら、これ一冊で基本から応用まで、スープの百科事典としても使えるような本になればと思っていました。うちの家には母が結婚するときに伯母から譲り受けた、辰巳浜子さんの料理本が今もボロボロになって残っているんです。私が今も大好きな実家のフレンチドレッシングのレシピもその本の中にあります。もう50年以上前の本ですよ。今回の本が50年残るかは分からないけど、流行だけで終わらない、ちゃんと残る一冊になれば嬉しいです。
――多くの方が買ってくださるといいですね。
遠山 今まで、日本の家庭でスープが登場する機会って意外に少なかったと思うんです。汁物はお味噌汁になったり、洋食でもサラダ、メイン、ごはんものまでは作っても、スープはなかったり……。スープって、家庭の中に余裕がないと、生まれないものなんでしょうね。この本を、うっかり買っちゃった方たちが、日常的にスープを作るようになって、家庭の食卓でゆっくりとスープを飲む文化ができるといいなと思います。家の食事で、最初にスープが出てきたりするとちょっと素敵でしょう。スープがあればビールもいらなくなるかも(笑)。
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