書評

科学技術系大学の最高峰MITが公開する
「感動する物理学」の授業

文: 東江 一紀 (翻訳者)

『これが物理学だ!マサチューセッツ工科大学「感動」講義』(ウォルター・ルーウィン著 東江一紀訳)

数式よりその美しさを

 本書には、そういう一連の(物理学の全領域にわたる)授業の興奮がそっくり収められているばかりか、熱血講師ウォルター・ルーウィンの出自と人生観、それに、物理学(とりわけ天体物理学)への熱い思いがふんだんに盛られている。『虹の尻尾から時間の鼻先まで――物理の驚異を巡る旅』という原書のサブタイトルが示すとおり。極小の量子の世界から、想像を絶する高密度のブラックホールに至るまで、宇宙万物の理(ことわり)が縦横無尽に語られる。

 全15講から成るこの連続授業の前半(第1講~第9講)では、物理学のさまざまな分野の基本的な、しばしば直観に反する法則が示され、楽しく印象的な実演の力で、読者はその輝かしい発見の過程を体感する。後半(第10講~第14講)では、ルーウィン教授の専門分野であるX線天文学の躍動的な短い歴史(教授自身の研究歴とほぼ等しい)が綴られ、その進展とともに少しずつ明らかになってきた宇宙の驚くべき姿と仕組みが読者の脳髄に刻まれる。そして、最終講では、独自の芸術観が開陳され、それが物理学の広範な知見の地図とウォルター・ルーウィンの人生の年表とをほんわかと結びつける。

 ルーウィン教授は40年以上にわたって物理学をMITの学生に教えているわけだが、その心構えを次のように説いている。

「わたしは日ごろから、物理学を学生たちのあいだに芽吹かせようと努めている。ほとんどの学生は物理学者になるわけではないのだから、複雑な数理計算に取り組ませるより、発見することのすばらしさを胸に刻ませるほうが、ずっと大切ではないかと思う。学生たちが世の中を違う角度から見る助けとなるよう、わたしは全力を尽くしてきた。今まで彼らの頭に浮かんだこともなかった疑問を突きつけ、今まで見たこともなかった方法で虹を見せ、こまごました数値や数式より、物理学の妙なる美そのものに焦点を合わせてきた」

 力と熱とエネルギーをたたえた実理の書。心躍る知の旅をお楽しみいただきたい。

これが物理学だ!マサチューセッツ工科大学「感動」講義

ウォルター・ルーウィン・著  東江一紀・訳

定価:1890円(税込) 発売日:2012年10月13日

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