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昭和随一の流行作家は超遅咲き 横溝正史

昭和随一の流行作家は超遅咲き 横溝正史

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 明治三十五年(一九〇二年)、神戸の生まれ。高校卒業後、銀行に勤めながら専門学校に通い、薬剤師の資格を得て、実家の生薬屋で働く。この間ずっと書き続けた探偵小説が江戸川乱歩に認められ、二十四歳で上京、「新青年」編集長などを勤める。

 しかし、雑誌発行元が倒産。専業作家となるも、肺結核を患い長野に転地療養、と苦難の連続。書き続ける探偵小説も、戦争に向う時勢に合わず、思うように出版できなかった。

 終戦直前に父の故郷・岡山に疎開、結果としてこの経験が生きた。戦争が終るや本領を発揮、土俗的な事件に挑む探偵が人気となり、昭和二十三年(一九四八年)「本陣殺人事件」で第一回探偵作家クラブ賞を受賞。四十六歳にしてようやく表舞台に踊り出た。なお、本名は「まさし」だが、作家仲間から「ヨコセイ」と呼ばれるうちに、「せいし」が筆名となった。写真は昭和三十七年、自宅にて。温厚な人柄で知られた。

 昭和五十一年、横溝正史は突如、二度目の大ブレイクをする。「犬神家の一族」を皮切りに、旧作が次々に映画化、復刊された。このとき七十歳を過ぎていたが、世間の期待に応えてますます旺盛に新作を発表し、昭和五十六年に没する直前まで書き続けた。

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