第6章では、今年5月にアメリカ軍の特殊部隊によって殺害されたオサマ・ビンラディンに影響を与えた『道標』(邦題は『イスラーム原理主義の「道しるべ」』)を紹介しました。「イスラムこそが救いだ」とする思想は、極端な形の運動を作り出し、ビンラディンらアルカイダのメンバーをテロへと駆り立てました。書物の力がこのような形で発揮されてしまうと、恐ろしさすら感じてしまいます。
ところで、この本は、女性誌「CREA」の連載がベースになっています。連載の途中で、東京電力福島第一発電所の事故が発生。放射性物質が拡散し、人々は放射能の恐怖に怯えました。そんなときだからこそと考えて取り上げたのが、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』でした。
私たち人間の思い上がりが、環境を破壊し、それは回りまわって、私たちの生活を破壊する。科学の力に対しても、人間はもっと謙虚にならなければいけない。それを教えてくれるという点で、現代でも意義のある書物です。(本書では第7章に)
第8章は、ダーウィンの『種の起源』。人々の意識を180度変え、科学の世界に大躍進をもたらした本です。それでも、一部のキリスト教徒の考えを変えることはできませんでした。『旧約聖書』の「創世記」の内容を否定する「進化論」を受け入れない人々が、現代でもおおぜいいます。
第9章は、ケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』。マルクスが『資本論』で暴いた資本主義の悪を、理性的な経済対策で抑える筋道を示し、資本主義は恐慌の恐怖から抜け出ることができました。
しかし、いくら有力な経済理論であっても、すべてを解決することはできませんし、社会構造が変化すれば、効果も減衰します。
そこで登場したのが、ミルトン・フリードマンの『資本主義と自由』。最後の第10章はこの論争の書で締めくくります。「こんな理論立ても可能なのか」と驚きの連続ですが、経済理論の面白さを味わうことのできる書でもあります。現代の経済政策の多くは、ケインズとフリードマンの間を行ったり来たりしています。
10冊の中には、「存在は知っているけれど、実際には読んでいない」というものもあるのではないでしょうか。あるいは、読みにくくて諦めてしまったものも。
内容がわかれば、現代に生きる私たちに、未来を切り開く力をも与えてくれます。これからの人生を考える上で、少しでもお役に立てれば。そんな思いでこの本をお届けします。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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