2011.11.14 書評

「半藤さんは山本五十六を描ける最後の書き手です」

文: 山本 源太郎 (山本五十六元帥の孫)

『聯合艦隊司令長官 山本五十六』 (半藤一利 著)

 太平洋戦争開戦から70年の節目にあたる今年12月。映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六」が全国公開される(12月23日からロードショー/配給・東映)。映画の監修は、山本五十六贔屓を自認する半藤一利さんがつとめた。シナリオの段階から参画し、加えて原作本を新たに執筆。
「本の話」編集部では、山本五十六の直系の孫である山本源太郎氏にこの原作本をお読みいただき、感想を伺う機会を得た。源太郎氏は昭和36年(1961)生まれの50歳。お話の中から山本家にまつわる驚きの新事実も飛び出した!

映画を観る前に読まれたい

――原作をお読みになっていかがでしたか。 

著者の半藤一利氏

山本 映画は山本五十六の海軍次官時代の昭和11年(1936)からはじまります。国際情勢だけでなく国内情勢も非常に混み合って複雑であった状況を、半藤さんはとてもわかりやすく書かれています。海軍がしだいに米英に対して強硬になって、開戦へと歩を進めていく過程が、まことにしっかり描かれていました。海軍に対しても厳しい筆致は半藤さんならではですね。ご自身の記憶も交えて時代の空気が、ありありと伝わってきました。さすが、と舌を巻きました。

 あの時代についてあまり知識がおありでない方が映画を観るときに、テキストとしてちょうどいい。できれば、映画を観る前に読まれるのがいいかなと思いますね。

 いろいろな方が山本五十六についていまだに本を出されていて、そのたびに父のところに送られてくるんです。父は黙って読むだけで何も言いません。それら現代の書き手の方々のほとんどは、実際に祖父と一緒に働いていた方の生の声を聞かれたことはありません。

 ところが半藤さんは、生前の祖父と関わりのあった人たちのうち、祖父をよく言う人にも、そうじゃない方にもインタビューされている。しかも長岡の歴史や風土への深い理解もある。その両方をもっていないと、五十六という人を語るのはむずかしいのではないかと私は思っています。そういう意味では、書く資格のある方、と言うと不遜ですけれども、半藤さんは、五十六を描ける最後の書き手なのではないかなという気がいたしますね。

――映画のラッシュをごらんになったようですが、映画の感想はいかがですか。 

山本 祖父は身長160センチで、60キロといいますから、役所広司さんみたいに大きく立派ではなかったのでしょうけれども、役所さんが時おり祖父とそっくりに見えてくるんです。不思議でしたねえ。それだけ役に入っていらしたということなのでしょう。役所さんばかりでなく、あの聯合艦隊は皆さん、じつにかっこいい。参謀のひとり、吉田栄作さんの受けの芝居がいいんです。

――次官時代の五十六さんは、新聞記者からは信頼され人気もあり、赤坂霊南坂にあった次官官舎にはよく記者が訪ねてきていたようですね。

山本 残念ながら新聞記者の話を聞いたことはありませんが、祖母は陸軍が派遣した憲兵が怖かったと言っていました。三国同盟締結に反対した祖父の命を右翼の連中が狙っていたときに、護衛させるという建前で差し向けられたのですが、彼らのほうこそ不気味だったと。

聯合艦隊司令長官 山本五十六
半藤一利・著

定価:1470円(税込) 発売日:2011年11月9日

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