心に残る人々を小説のように
「この電子書籍『藝人春秋』では、実際に出会った心に残る人々を『藝人』として、小説のように描写しようと思いました」
水道橋博士はこう語る。
人気漫才師・浅草キッドのツッコミ担当として、テレビ、舞台で活躍する一方で、多くの雑誌連載を抱えるなど、独特の人物批評に基づく文章の才能にも定評がある。
去年6月に初の電子書籍となる『藝人春秋』を刊行。約2か月に1回の割合で刊行され、この2月末に出た第6回で「完結」した。全6回のラインナップで、登場する「藝人」の面々は以下の通り。
第1回 そのまんま東(東国原英夫) 石倉三郎 草野仁
第2回 甲本ヒロト 三又又三
第3回 堀江貴文 湯浅卓 苫米地英人
第4回 テリー伊藤 稲川淳二 ポール牧
第5回 吉田豪 桑野信義 宮崎哲弥 掟ポルシェ 大槻ケンヂ
第6回 古舘伊知郎 太田光 松本人志 北野武
テレビでは決して伝わらない世界を伝える
本作の中には、博士が触れた「藝人」たちの滋味溢れる言葉が数多く出てくる。
「オマエらは、(中山)秀ちゃんとか、バカにしてんだろうけど、あれはいい芸人やで~。ああいう連投が利く、肩作ってないと、テレビという一軍では投げられんで~」(そのまんま東)
「芸能界は親が死んでもトチれない世界なんだよ。だから辛抱だ、辛抱ってのは、辛さを抱きしめるってことだからな。今はひとりで抱きしめろよ、我慢とは違うんだよ、わかるかい?」(石倉三郎)
「いいかい、このことをお笑いにしたら承知しませんよ。これは、お笑いじゃなく真面目にやっているんだから、わかったか!」(ポール牧)
「やっぱり、俺は石原さんは苦手ですねぇ」(太田光)
これらは、テレビでは決して伝わらない、芸人がほかの芸人を冷静に見つめる目、自らの仕事に対するプライドの高さなどが伝わってくる言葉だ。
さらに、普段のメディアではなかなかわからない有名人の「意外な一面」も。
「もう一度、人生があるなら、お相撲さんに成ってみたいと夢見ることがありますねぇ~」(草野仁)
「談志=ロッケンロールだと思うんだ。なんか見ていると“ナッシング・トゥ・ルーズ”を感じさせるんよぉ」(甲本ヒロト)
「楽しいことはラクじゃないんだよ。同じ字だけど、よく勘違いしている人がいるんだぁ」(同)
「俺はさぁ。今、北朝鮮が面白いと思うんだよね~」(テリー伊藤)
水道橋博士の「聞く力」は、相手のガードを緩めて、大言壮語と思われるようなスケールの大きい話を引き出してみせる。驚くべきことに、以下の言葉は、いずれも「真実」なのである。