島根県「竹島の日」条例制定が韓国メディアを連日にぎわしていた2005年、韓国で「独島パンツ」という商品が発売された。独島は周知の通り、竹島の韓国名。「独島パンツ」は2つの小さな岩礁からなるあの島を図案化して、下着にプリントしたものだ。
メーカーはこれを日本の首相官邸に小包で送付。官邸は「小泉首相(当時)は官邸への小包を受け取らない方針」とのメッセージを添えて送り返したという。この経緯は早速メディアに伝えられ、大手新聞や通信社が「日本の小泉首相、独島パンツの受け取りを拒否」などと報じていた。
種を明かすと、これは下着メーカーが企画したPRイベント。大手メディアまでニュースにしたことで、メーカーは無料で大きな宣伝効果が得られたわけだ。多くの韓国人はこうした商売根性に眉をひそめるが、こと「独島」に関して批判の声は小さい。ばかばかしい事例だが、これも「独島」を巡る韓国の日常だ。
「独島」から見える隣国の側面
メーカーはこの商品について、「国民の『独島サラン』をデザインに込めた」とアピールしている。「サラン」は日本語で「愛」。つまり「独島サラン」は「独島愛」だ。これが若者向けにTシャツなどで英語表記する場合、「I LOVE Dokdo(独島)」「Dokdo Love」などと表現される。
「独島サラン」は、90年代からメディアなどで盛んに呼びかけられるようになった国民的スローガンだ。それより古い例には、「独島は我が民族の自尊心」というのもある。
「独島サラン」といったスローガンを「竹島サラン」と訳し換えても、もはや意味をなさない。そこで語られている韓国社会にとっての「独島」は、日本人が竹島と呼ぶあの岩礁とは次元が異なる存在だからだ。
では竹島とは異なる「独島」とは、いったい何なのか。本書はこれをテーマに、可能な限り多くの事例を収集してみた。書名以下、本文でも「独島」で統一しているのはそのためだ。
なぜあの小さく不毛な岩礁が愛の対象や民族の自尊心になるのか、日本人には理解しづらい。だがそこには「反日感情が根強いから」といった従来の説明だけではうかがえない、韓国の社会構造や政治状況が絡んでいる。「独島」というキーワードを通して、この隣国のあまり知られていなかった側面も見えてくるはずだ。
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