書評

「独島(トクト)」を通じて見える韓国

文: 高月 靖

『独島(トクト)中毒 韓国人の異常な愛情』

愛国プロパガンダのシンボル

「独島パンツ」は卑近な例だが、もちろん韓国で「独島」は非常にシリアスな問題でもある。断崖絶壁ばかりで近海は波も荒い「独島」は、人にとって極めて危険な環境だ。これまで実効支配のため派遣された警官、機動隊員のうち、7人が亡くなった。死因は転落死及び水死。いっぽう90年代の接岸施設建設工事では、作業船の沈没で民間人3人が亡くなっている。

 だがこうした危険を顧みず、一部団体は断崖をはい登って植樹活動を続けてきた。90年代にはまた、「独島」での出産を試みた妊婦もいる。植樹も出産も、領有権を既成事実化しようとする彼らなりの努力だ。ただし試みは、いずれも失敗に終わっている。

 文字通り命がけの行為に対してどれだけの見返りがあるのかも疑問だが、メディアは称賛を惜しまない。「独島サラン」への献身を呼びかける、格好の愛国プロパガンダになるからだ。

 やがて排他的経済水域(EEZ)問題を通じて対日バッシングが高潮した1996年以降、「独島サラン」への献身は公教育を通じて小学生にも教育される。

 ロンドン五輪で「独島プラカード」を掲げた韓国選手も、小学生として当時の教育を受けていた。

「独島」言説の変遷と将来

「独島」が韓国で最初に大きな話題になったのは、李承晩ラインが設定された50年代前半。だが後の軍事政権を通じて、「反日」より「反共」が政治のより重要なテーマになった。

 やがて民主化を経て南北宥和が新しいテーマになると、「独島」はそのシンボルとして再浮上する。そしてEEZなどを契機としながら、「独島サラン」を巡る言説が爆発的に拡大していくわけだ。こうして政治的に繰り出される日本バッシングのなかで、「独島」はもう通過点の1つに過ぎない。

 韓国はいまアメリカと中国という2つの強大国の間で、新たな南北緊張に直面した。近年急速に中国への傾斜を深める韓国政府は、日本に対してより対決的な姿勢で臨むとの予測もある。国内の対日世論を集約する「独島」言説は、いっそうの注視が必要だ。

独島中毒

高月 靖・著

定価:1050円(税込) 発売日:2013年05月11日

詳しい内容はこちら