本の話

読者と作家を結ぶリボンのようなウェブメディア

キーワードで探す 閉じる
愛川欽也、「トラック野郎」の原点「ルート66」を熱く語る

愛川欽也、「トラック野郎」の原点「ルート66」を熱く語る

文・写真:「文藝春秋」写真資料部


ジャンル : #ノンフィクション

「11PM」を十一年間、「なるほど!ザ・ワールド」を十五年間、「出没!アド街ック天国」を二十年間。七〇年代からほぼ四〇年間にわたり、時代を代表する番組を司会してきた、「庶民の隣人」だ。

 昭和九年(一九三四年)、東京生まれ。浦和高校在学中に俳優を目指し、中退して俳優座養成所に入る。アメリカの映画やテレビが次々に輸入されていた時代で、その吹き替えを千本以上したという。「アパートの鍵貸します」のジャック・レモン、「雨に唄えば」のジーン・ケリー、「ラジオ・デイズ」のウッディ・アレン。「奥様は魔女」にも「スパイ大作戦」にも愛川の声が響いている。

 アメリカのドラマシリーズ「ルート66」に感動し、そこから愛川が企画した東映映画「トラック野郎」は、昭和五十年から四年間で十作の大ヒットシリーズになった。「文藝春秋臨時増刊」でその話を語っているのが上掲の写真で、平成十九年の撮影。

「ルート66」はアメリカの大学を卒業した若者コンビが、スポーツカーで旅するという設定だが、「トラック野郎」ではそれが極貧育ちの桃次郎(菅原文太)と、警察官を懲戒免職になった金造(愛川欽也)の中年コンビによる、電飾と極彩画の長距離トラックの運搬仕事に変化した。庶民派の面目躍如である。

 大河ドラマからアニメまで、万能の活躍ぶりは、順応性の高さゆえだろう。だがその上に「劇団キンキン塾」を結成し、私財を投じて小劇場「キンケロ・シアター」をオープンし、自らのウェブ放送局「kinkin.tv」も開局。舞台や自主制作映画、インターネット局の番組まで、自らがすべてを主宰する場を、自身で作り出してもいる。

 うつみ宮土里とのおしどり夫婦でも有名だった。前妻との離婚や晩年に至る愛人、レストラン経営の失敗などスキャンダルも多かったが、不思議と許されてきたのも、「高潔でない庶民」というキャラクターと、常に自分のやりたいことに直進していた情熱が、憎めなかったからだろう。

 平成二十七年四月十五日、肺がんで逝去。八十歳。直前まで病気のことを伏せて活躍し、最後の引き際は見事に素早かった。

プレゼント
  • 『赤毛のアン論』松本侑子・著

    ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。

    応募期間 2024/11/20~2024/11/28
    賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様

    ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。

ページの先頭へ戻る