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「あまロス症候群」撲滅! 『あまちゃん』を逆回転(プレイバック)する徹底解読書

「あまロス症候群」撲滅! 『あまちゃん』を逆回転(プレイバック)する徹底解読書

文:中川 大地 (「PLANETS」副編集長)

『あまちゃんメモリーズ 文藝春秋×PLANETS』 (みなさんのあまロスをなんとかすっぺ会 編)


ジャンル : #ノンフィクション

 

『あまちゃん』をもっと知りたい、お手元に完全保存したいあなたに。気鋭の批評家・宇野常寛を編集長に迎えた最強の「あまちゃん」本が完成しました!

このページでは、その魅力をお伝えすべく、中森明夫×茂木健一郎×中川大地×宇野常寛による『あまちゃん』白熱論争の動画と、副編集長による本書紹介、また、豊富なカラーページから厳選した一部のイラストをご覧いただけます。

中森明夫×茂木健一郎×中川大地×宇野常寛による
『あまちゃん』白熱論争

 

イラスト:シラトリユリ

 おれたち的には、この勝利は約束されていた――。NHK朝の連続テレビ小説『あまちゃん』のことだ。

 岩手県北三陸地方の地域振興と東京でのアイドル活動をテーマにした本作は、主演・能年玲奈の鮮烈な存在感や、宮藤官九郎脚本の軽妙な台詞回しと緻密に計算されたストーリーテリング、80年代の世相からAKB48以降のグループアイドルブーム、東日本大震災に至る現実事象の導入など、様々なファクターが奇跡的に結合。従来の朝ドラの保守的な印象を大きく覆し、ツイッターなどソーシャルメディア上での広がりとも相まって、それまで見向きもしなかった各界の文化人たちをも夢中にさせる空前の話題作となった。

 批評家・宇野常寛主宰のカルチャー批評誌「PLANETS」では、2000年代以降に実験的な作品として台頭してきた『木更津キャッツアイ』などのクドカン作品の流れや、『ちりとてちん』など野心的な朝ドラ作品について、同時代カルチャーの中でも特に重要なコンテンツとして注目し、かねてから様々な特集を行ってきた。

 したがって、世評に抗いながら推し続けてきたクドカン&朝ドラの進化がクロスした集大成『あまちゃん』が、内容・人気ともにジャンルの壁を超えて、かつての『新世紀エヴァンゲリオン』を更新するような時代を画するヒット作に成長しつつあることには、深い感慨を抱かずにいられない。

 こうしたPLANETSならではの切り口で『あまちゃん』の作品的本質とムーブメントの熱気に迫り、硬軟とりまぜた語りでつづる“究極のあまちゃん本”として実現したのが本書だ。コンセプトは、ドラマと現実の垣根を超える〈拡張現実〉的現象だった『あまちゃん』を、改めて体験し直すこと。冒頭からナビゲートしてみよう。

 まず、表紙・巻頭グラビアには「若き日の天野春子」役の有村架純を起用。物語を影から駆動し、最終週で印象的な“成仏”を遂げた「その少女」が、もしも現代の上野・アメ横に転生したら……。そんな東北の玄関からの導入に続くのが、ロケ地・久慈市の写真紀行「北三陸ストレンジウォーク」。ドラマでおなじみの景色を巡礼しただけでなく、なぜこの地で『あまちゃん』という作品が生まれたのかの秘密にじっくりと迫っている点に注目だ。

 こうしてドラマの世界に移り、編集長・宇野常寛の基調論考と、それを受けての中森明夫氏・茂木健一郎氏との「『あまちゃん』白熱論争」へ。一過性の突発的なブームでない、本作の歴史的な凄みが腑に落ちる、刺激的な『あまちゃん』論が展開されている。

 ファン最大の注目は、主要登場人物全員を描き下ろし「あま絵」とレビューで解説した「『あまちゃん』人物陳列室」だろう。末次由紀氏、折原みと氏、高田明美氏など錚々たる執筆陣の競演に、画稿が届くたび編集部も大興奮だった。

 加えて「全156エピソード完全レビュー」。放送当時、最終回まで1日も欠かさず展開した筆者(中川)のリアルタイム評を凝縮しつつ、ネットでの「あま絵」ブームを牽引した青木俊直・シラトリユリ両氏による26週分の情景イラストで、半年間の物語への新たな気づきを掘りおこす。

イラスト:青木俊直

 さらに「アマペディア」では、「わかるやつだけわかればいい(花巻さん)」劇中用語を詳述。天野家三代の年表も付いて、単なる小ネタ解説に留まらない、ドラマと現実とのリンクを明らかにした。

 ここで再び現実に戻り、音楽の大友良英氏に本作への「祝祭劇」としての取り組みを、そして知る人ぞ知る能年玲奈の演技指導者・滝沢充子氏に「天野アキ」そのままの彼女の素顔を初めて

単行本
あまちゃんメモリーズ
文藝春秋×PLANETS
みなさんのあまロスをなんとかすっぺ会

定価:1,430円(税込)発売日:2013年10月31日

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