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神格化された東郷平八郎の晩年

神格化された東郷平八郎の晩年

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 皇国の興廃をかけた日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を撃破した連合艦隊司令長官東郷平八郎。日露戦争の英雄として世界に名をとどろかせ、大正、昭和を通じて「神様」と崇(あが)められるようになった。

 「東洋のマタ・ハリ」川島芳子の熱河自警団総司令就任を取り上げた朝日新聞昭和八年(一九三三年)二月二十二日付けの紙面には、「蟹工船」でブームとなった小林多喜二が「築地署で急逝」の衝撃的な記事とともに、「元帥と間違へられた少年株主東郷平八郎」の記事が目を引く。東郷元帥がなぜか合同精米会社の株主となっているとの情報が流れたが、調べてみると、同姓同名の下谷高等小学校生、東郷平八郎少年(十五歳)と判明したというバカバカしいお話。ごていねいなことに少年の顔写真までそえられている。神格化された晩年の元帥の一端をあらわすエピソードである。

 写真は昭和七年(一九三二年)一月五日撮影。昭和九年死去の際には、国葬が営まれた。

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