2014.07.07 文春写真館

天体望遠鏡を覗く、大正モダニズムの巨匠・稲垣足穂

文・写真: 「文藝春秋」写真資料部

天体望遠鏡を覗く、大正モダニズムの巨匠・稲垣足穂

 漢字で書くより、「イナガキタルホ」とカタカナで書くほうがなじみがいい。稲垣足穂は明治三十三年(一九〇〇年)、大阪に生まれる。幼いころから飛行機や天体、メカニックの世界にあこがれ、関西学院在学中に、同人誌「飛行画報」を創刊する。

 飛行家になることを夢見るが、断念。上京して、佐藤春夫の知遇を得たのち、「一千一秒物語」で彗星のように文壇に登場したのが大正十二年(一九二三年)。カタカナ名前で発表された「星を造る人」「黄漠奇聞」「天体嗜好症」などの作品は、大正モダニズムの金字塔として、一世を風靡した。

 しかし、佐藤春夫と仲たがいして、文壇を去り、関西に戻る。いくつかの事業に失敗し、同人誌などに作品を発表したが、生活は困窮を極めた。

 戦後、結婚して京都に移り住む。昭和四十三年(一九六八年)に発表された「少年愛の美学」で第一回日本文学大賞受賞。翌年「稲垣足穂大全」が編まれ、「タルホ」ブームが起こった。

〈男には冒険とオモチャが必要なんです〉〈近頃の文士はなんですか、食いものや男女間の感情におぼれてばかり。文化人と称する連中も千代紙細工かニセモノづくし。文明がありません〉(文藝春秋 昭和四十七年七月号「日本の顔」より)。天体望遠鏡を覗く写真は、このときに撮影された。

 昭和五十二年没。

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