本書は、楽器設計家として音と音楽に関わってきた私の経験をもとに、ギターの音色の魅力と製作の秘密をまとめた一冊だ。
書名を『僕ら……』としたのは、名を残すことなく消えていった熟練のギター職人達に、本書を捧げたかったからだ。そして、いつもギターを手放さずに、音楽に情熱を傾けていたギタリスト達の顔が、次から次と浮かんできたからだ。彼らと同じ音楽馬鹿の一人として、私はこの本を書いた。もちろん、目を輝かせてギターに熱中したギター少年少女もまた、「僕ら」の一員であることは言うまでもない。
音楽専門書の堅苦しさを避け、新書ならではの気楽に読める話題を多く盛り込んだ。ヨーロッパ各国のクラシックギターの名工房を訪ねた旅の話や、フォークソングブームの嵐、ウッドストックの熱狂などなど。取り上げたギターも、アコースティックからエレクトリックまで幅広い。レコードが擦り切れるまで聴き、ラジオから流れてくるヒットチャートに心躍らせた世代には、懐かしいギタリストやギターがきっと数多く登場するだろう。
ギターの歴史を築いてきたマーチン、ギブソン、フェンダーの御三家については、それぞれのサウンドの特長に触れてみた。また、私が関わった国産ブランドも多く登場する。グレコ、モーリス、フェルナンデス、HSアンダーソン、ESP、ベスタグラハムといった名前を耳にするだけで、音がよみがえる往年のギターファンもいるのではないだろうか。
こうしたギターのいくつかは、近年「ジャパン・ヴィンテージギター」として、国内外で高く評価されている。30年以上前に作ったギターを、得意になって弾いている現代の若者をインターネットの動画サイトで見ると、過去にタイムスリップしたような不思議な気持ちになる。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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