- 2010.03.20
- インタビュー・対談
作家としての幅を広げ「世界を理解する」ために
「本の話」編集部
『オープン・セサミ』 (久保寺健彦 著)
出典 : #本の話
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
──最初に小説、例えば絵本のようなものでもいいんですが、ストーリーを書かれたのはいつですか。
久保寺 小学校一年のときに学童保育に行っていて、クレヨンと紙を渡されたのですが、「パップチャマン」というマンガを描いて、友だちに読ませたりしていましたね。
──職業としての作家を意識されたのは、当然もっと大人になってからですね。
久保寺 それはだいぶ遅くて三十歳を超えてからです。ほかに人生プランがなくて、いつか作家になろうとは思っていたんですが、特に何かを書いていたわけではないんです。三十四歳になったとき、年齢を二倍したら七十歳近くになる、人生の折り返し地点に来ているというのに気がついて、にわかに焦りだしました。新人文学賞に応募するくらいしか方法を知らなかったので、三十四歳から三十五、六歳にかけて四篇書いて、一篇だけ一次選考を通りました。自分でもそんなものだろうと思いましたね。で、三十七歳のときにまた四篇応募して三篇通って、翌年デビューしました。一念発起というよりお尻に火がついた感じでしたね。
──久保寺さんは読書家としても有名ですが、好きな作家はどなたですか。
久保寺 筒井康隆さんです。大学の法学部を出てから日本文学で大学院にいったのですが、専攻の作家を決めなければいけないので横光利一にしました。というのは以前、筒井さんがテレビで横光利一の「機械」を朗読されていたことがあったんですが、筒井さんが褒(ほ)めているという理由で決めたようなものです。その時点では「機械」を含む短篇集しか読んでいなかったし、横光利一全集も買っていませんでした(笑)。それだけ筒井さんに傾倒していたんです。言い訳するわけではありませんが、三十歳過ぎまで小説を書かなかったのも、自分が書くものより絶対、筒井さんのほうが面白いに違いないという考えがあって、闘う前から負けている状態でした。だけど、例えば筒井さんの笑いの質と僕のが同じである必要はないんだと思えたあたりから、書いてもいいんだと思うようになりました。
──作家としてこれから書きたいもの、おやりになりたいことはありますか。
久保寺 身も蓋(ふた)もない言い方をすれば、今の十倍ぐらい名前を知ってもらって、十倍ぐらい読んでもらえるようになりたいです。そのためには、いい作品を書くしかない。いい作品というのは、縮小再生産のように自分で自分をなぞっていてはダメなので、常にやったことがないこと、書いたことがないものを書いていきたいと思います。
──そういう意味では『オープン・セサミ』は一つ階段を登った作品になったのでしょうか。
久保寺 これまでの守備範囲を超えたところで闘えた作品になったと思います。
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