今月でフジテレビの会長の座を退く日枝 久氏がライブドアの堀江貴文氏とニッポン放送株を巡って激しく争ったのは、2005年。それに関連して、村上ファンドの村上世彰氏は逮捕、有罪判決を受けることとなった。
「村上ファンド事件」と呼ばれる日本のITバブル時代の象徴的な事件の裏側に何があったのか──
日本企業の「あるべき姿」を求めて闘い続けた
村上氏が一連の投資を通じて訴えたかったのは、日本企業におけるコーポレート・ガバナンスの欠如です。
必要もないのに上場したり、利益を株主への還元や新たな投資に回さず、無駄に内部に溜め込んでいるため、日本とアメリカの上場企業の純資産はほぼ変らないのに、時価総額では3~4倍もの開きが出てしまうのです。東芝の問題についても、コーポレート・ガバナンスの不備を指摘しています。
その様な観点で見ていくと、東京スタイル、ニッポン放送、阪神電気鉄道といった村上氏が株を取得し、改革のプランを提示していった企業の経営陣の反発や感情的な態度はいかにも旧弊なものに見えてきます。
村上氏にとっては今も充分でないにしても、日本のコーポレート・ガバナンスの雰囲気は当時とは大きく変わりました。逆に言えば村上ファンドは登場が早すぎたとも言えるでしょう。
本書はまた、投資哲学の指南書としても有用です。台湾出身の投資家を父に持ち、小学3年生の時から株を買っていたという村上氏。投資判断の基準となる「期待値」の数式とは?
自信満々だった当時の村上氏を知る人は、自省を踏まえた語り口に驚かれるかも知れません。
村上氏による最初で最後の告白本『生涯投資家』(1,700円) は21日発売です。
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『リーダーの言葉力』文藝春秋・編
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