書評

2大人気シリーズのコラボレーション作

文: 「週刊文春」編集部

『凍る炎 アナザーフェイス5』 (堂場瞬一 著)

「燃える氷」メタンハイドレートの研究施設で起きた密室殺人事件。殺された主任研究員が開発していたある技術とは? 中国人窃盗団による宝石店爆破事件に関わった刑事総務課の大友鉄は、新たな海洋資源をめぐる最悪の謀略に巻き込まれていく。「警視庁追跡捜査係」シリーズと相互クロスする難事件が幕を明ける。 文春文庫 690円+税

「2つのシリーズを完全なクロスオーバーの形にしたらどうなるのだろうという構想が前からあったんです。出版社の壁を超えてのコラボで、普段とは違う持ち味に仕上がりました」

 警察小説の俊英・堂場瞬一さんの最新作は、「アナザーフェイス」シリーズと「警視庁追跡捜査係」(ハルキ文庫)シリーズのコラボレーション作品。「アナザーフェイス」でお馴染み、イクメン刑事大友鉄の窮地を追跡捜査係の沖田・西川の名コンビが救うという、ファン垂涎(すいぜん)の設定だ。

「最初、同じ事件の裏表で書く案もあったのですが、最終的には『凍る炎』で解決されたはずの事件を追跡捜査係の最新刊『刑事の絆』(ハルキ文庫12月14日発売)で洗い直し、大団円を迎えるという映画的な繋がりにしました。大友鉄はかつてないスケールの事件に巻き込まれ、沖田・西川は今までにないストレートな熱さを発揮します」

『凍る炎』では“夢のエネルギー資源”メタンハイドレートをめぐって国際的な謀略が勃発する。

どうばしゅんいち/1963年茨城県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。2000年、『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。「刑事・鳴沢了」シリーズ、「アナザーフェイス」シリーズ等のベストセラーのほか、『Sの継承』『虚報』など著書多数。

「3・11以降、日本の資源問題をずっと考えてきたのですが、メタンハイドレート、シェールガスをめぐる資源ビジネスはいま世界で一番ホットな分野です。近年日本の近海で大量に発見されているメタンハイドレートは資源ビジネスの大きな切り札になる可能性が高く、大変面白いんですね。

 一方ここ20年、情報網・交通網の発達で世界は急激に狭くなりました。ということは、すごく身近な犯罪事件なのに世界のどこかと直結していることがあり得る。そうなると従来の捜査のやり方では対応しきれないわけです。今回、大友はそれで苦労していますが、犯罪捜査が鎖国的な日本において、資源ビジネスと世界の近さが絡み合う、来る事件を予見的に書いたのが本書です」

 悩める大友の姿もまた今回の読みどころの1つ。仕事と家庭の狭間、男手ひとつで息子を育てる異色の刑事像はどうやって誕生したのだろう。

「そんな設定にしたのも、シングルマザーの苦労は注目されているけど、シングルファーザーはクローズアップされてこなかったから。大友は子育てのため自らの意志で捜査一課を外れたので、いわばキャリアが折れている。でも周りの支援で前線に復帰しつつあるリハビリ期間中です。何か事情があって一度仕事を離れても、セカンドキャリアは構築できるんだと、大友という人間で証明したい」