2018.06.26 書評

ハードボイルドの可能性を模索した、軽妙路線の異色にして怪作!

文: 薩田博之 (フリー編集者)

『極悪専用』(大沢在昌 著)

『極悪専用』(大沢在昌 著)

 本作『極悪専用』は、マンションの管理人とその助手を主人公に、その敷地内だけでの事件を描くという大沢(『やぶへび』・講談社文庫の解説でも触れましたが、大沢のマネージメント・オフィスに在籍していた私としては、さん等の敬称をつけるとやはり心持ちが悪いので敬称は略させていただきます)には珍しい設定の連作短編集です。

 この設定が生まれたのは、飲み屋での「マンションの管理人を主人公にしたら面白いよね」という何気ない一言だったようです。一口にマンションといっても、都心のタワーマンションから、郊外のファミリーマンション、単身者が多く住むワンルームマンションなど形態は様々です。年齢、職業、国籍などが異なる多様な人間が共棲するマンションは、魅力的な事件現場に映ったのでしょう。

 その時にどのようなマンション像があったのかは知るすべもありませんが、「オール讀物」での連載をスタートさせるにあたり出してきた答えが、世界中の極悪人がセーフハウス的に利用しているという特殊なマンションでした。



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極悪専用大沢在昌

定価:本体760円+税発売日:2018年06月08日