インタビューほか

山岸凉子特別インタビュー 怜悧なまなざしで作品世界に切り込む! 読むたびに、新しく、胸に突き刺さる傑作集

門田恭子 (ライター)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

 異様といえば、忘れられない出来事があった。

「あれはデビューから数年間、カリカリと必死で下手な絵を描いていたころだったかしら。郷里の北海道に帰ろうと向かった羽田空港で、ロビーの奥からゲェーッ、ゲェーッと怪鳥が鳴くような声が聞こえて……。金髪にド派手なフリフリのドレスを着た『天人唐草』の響子にそっくりな女性がこっちに歩いてきたんです」

 そう、この作品の最初に登場する衝撃のシーンは実際に羽田空港で見た光景そのものなのだ。本作が発表されたのは四十年近く前だが、今も響子と同じような悩みを抱えた人は少なくないはずだ。男女平等がうたわれても、夫は家に帰れば「キミも働いていいよ、ただし、家のことをちゃんとしてくれるならね」と平気で妻にいう。

「まして私が子供のころはもっとひどい、男尊女卑の封建的な考え方にこり固まった響子の父親そっくりの男性がいっぱいいました。古いアシスタントさんによると、私は『天人唐草』のひとコマ、ひとコマを“あぁ、イヤだ、イヤだ”とうめきながら描いていたんですって。響子と私の生い立ちに共通点が多すぎて、息苦しくなっていたのね。うちの場合、父は寛容でしたけど、母はつねに男女の役割が頭の中にある人でしたから」

 男の子はいいの、でも、女の子はねと厳しく躾けられて自信を失い、山岸さんはオロオロと顔を伏せたまま大人になっていった。今の怖いものなしの姿からは想像できないが、お客に茶を一杯出すにも粗相をしないかと手が震えるほどだったという。



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