2018.09.22 書評

生きるという路上において、たった一人でぽつんと立っている迷い子たちの記

文: 中島らも (作家)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

 山岸涼子さんが、かの白き指先でひらひらと編まれた自選作品集である。

 マフラーを編むのかセーターを編むのかを決めずに編み始めてしまう人はいない。まず編む意志がくっきりとあってものが形を成す。ではこの本はどういう意志の元に編まれたのだろうか。

 この本をひとつの言葉でくくるのはそう簡単ではない。恐怖もの、恋愛ものといった既成のジャンル分けの用語はこの一冊に対しては意味をなさない。もし大変にがさつで勇ましい人がいたら、「心理ミステリー」なんていう名をこの本につけて澄ましていられるかもしれない。それでは本が気の毒だ。


 この本のテーマは「迷い子」である。デパートで迷っているわけではない。生きるというその路上において、たった一人でぽつんと立ちつくしている子どもたちがここには描かれている。



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定価:本体780円+税発売日:2018年09月04日