インタビューほか

山岸凉子特別インタビュー 怜悧なまなざしで作品世界に切り込む! 読むたびに、新しく、胸に突き刺さる傑作集

門田恭子 (ライター)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

『天人唐草 自選作品集』(山岸凉子 著)

 どこにも欠けたところのない融は“飛ぶ”能力のない無用のトリだ。そんな彼の前に人見という良き理解者が現れる。ふたりは父子のような絆で結ばれながら、じつは同性愛的な感情で互いに惹かれ合ってもいる。だからこそ、実の祖母の死には発揮されなかった能力が、人見を失いかけたときに一気に解き放たれたのだ。山岸さんは「日出処の天子」の中でも厩戸王子(のちの聖徳太子)を超能力者として、また、同性愛者として描いた。異端とされるものに注ぐ著者のまなざしは深く、どこか切ない。

 融が初めて“飛ぶ”瞬間を象徴した、あの大きな港の風景は……?

「人はよく飛ぶ夢を見るというけれど私は一度も経験がなくて、なぜかしらと不思議に思っていたら、ある晩、突然、飛んでいる夢を見た。目覚めても強く印象に残っていて、その夢を見たままに描きました。豪華客船が横浜に入港したというニュースが頭の片隅にあったのでしょう。私にはめずらしく幸せな結末を迎える物語ですね」

 子供のころ、山岸さんのまわりには戦争体験を持つ大人がいっぱいいた。壁に焼きついた人の影、全身からはがれ落ちた皮膚。小学校の先生が話してくれた原爆の悲惨さは子供の想像を超えていた。「だから私は今も核が怖くてたまらない」と山岸さんはいう。「夏の寓話」には原爆に対する作者の断固とした意志が貫かれているが、表現はどこまでも淡く、抒情的だ。学生のころに読んだトルコの詩人の「死んだ女の子」という作品から着想を得た。ラストで紹介される「扉をたたくのはあたし」という書き出しで始まる痛切な詩である。

 アシスタントさんたちとの九州旅行で訪ねた長崎の原爆資料館で山岸さんは奇妙な体験をした。

天人唐草山岸凉子

定価:本体780円+税発売日:2018年09月04日


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