- 2019.11.18
- コラム・エッセイ
自分の信念を曲げられずに日々会社で戦っている、すべての働く人へ
朱野 帰子
『科学オタがマイナスイオンの部署に異動しました』(朱野帰子・著)
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
似非科学をテーマに連載をしませんか、という提案を文芸誌『別冊文藝春秋』の編集者からいただいたのは、深海探査をテーマにした『海に降る』がWOWOWでドラマ化されることが決まった頃だったように思います。科学オタクの作家だから似非科学にも詳しいと思っていただいたのでしょうが、私は迷いました。
世の中には、マイナスイオンや、パワーストーンや、水素水のような似非科学商品がたくさん売られています。有名企業の商品ラインナップにもけっこうな数ひそんでいます。売る側が似非科学商品だという自覚なく開発や販売に関わる場合も多く、サラリーマンだった頃の私もその一人でした。今話題の「血液クレンジング」のように命に関わるような商品ではありませんでしたが、「似非科学をテーマに」と言われた時、正義の側には立つ資格はないと思いました。
また当時は、理化学研究所の研究者たちが発表したSTAP細胞に関する論文に疑義が生じたばかりでした。記者会見への対応などのリスクマネジメントも一般企業のそれから十年から二十年は遅れており、科学への信頼が揺らいでいる時でもありました。
これから書く小説の主人公は、どんな人にしたらいいのだろう。
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