- 2024.02.26
- 特集
「思わず一気読み」「心からおすすめしたい」など激推しの声多数! 大前粟生さん『チワワ・シンドローム』のレビューをご紹介します
『チワワ・シンドローム』(大前 粟生)
出典 : #WEB別冊文藝春秋
ジャンル :
#小説
大前粟生さんの最新刊『チワワ・シンドローム』が2024年1月26日に発売になりました。
ある日、「チワワのピンバッジが知らない間につけられていた」という声がネットに溢れた。その数、800人以上! 〈チワワテロ〉と呼ばれるようになるこの事件の直後、私の好きな人は私の前から姿を消した――。
炎上時代を生きる私たちに突き刺さる、鋭くかつ優しい物語です。早くも届いた読者の方々からの〝激推し〟の声の数々、ご紹介いたします!
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とても面白かった!!
大前さんがこれまで描いてきた「やさしさ」にはとても共感していたが
ネット上での正義感や、なんでも傷つけないことがいいことという
昨今の世の流れには疑問に思うことも多々あって、
それをこんな解像度で描けるのはやはり大前さんしかいないし
うまく言えないけれど、我々が大前さんを時代の代表のように持ち上げすぎたから、いま、大前さんから復讐されているんだ、という気持ちになりました(もちろんいい意味で)。
10代の読者や「傷つくことも傷つけることも怖い」と考えている人たちにも
心からおすすめしたい1冊です。花田菜々子さん(書評家・書店員 蟹ブックス)
面白かった!
思ってたよりもちゃんとミステリだった。
ミステリ的な構造と、小説を貫く主題がガチっと噛み合う瞬間があり、「これは、大前粟生がミステリを書く意味がある…!!」と感動した。
純文読みにもミステリ読みにも届いて欲しい小説です。金子玲介さん(作家・第65回メフィスト賞受賞者)
楽しみにしていた大前粟生さんの新作は、〈チワワテロ〉をめぐるミステリ×エンタメ!
スピーディかつ先が気になる展開で一気に読まされる!
現代を象徴するようなポップでノリが良くて乾いた空気感と、それでいて漂う違和感がリアルに表現された文体にわくわくさせられつつも、謎解きの先の結末で、本当の弱さ、強さとは何なのかと問われていくかのような――。
面白いだけでなく、繊細な鋭利さを併せ持つこの感じがたまらなく好きだ。入江真紀さん(未来屋書店 北関東エリアマネージャー)
世の中を賑やかす「チワワテロ」とインフルエンサーたちを巡るミステリーのような親しみやすいストーリーで、何となく読み始めたものの、思わず一気読みしてしまいました。
日常に蔓延る生きづらさや凄まじい世の中の変化に対して、人々は強さではなく「弱さ」に憧れてしまうという作中のテーマが鋭く、読んでいて共感しました。中野亜美さん
他人に今の自分の弱さをどれだけ分かって貰えるだろうか。
親しい人にずっと寄り添えるなんていつも言えるのだろうか。
全てをさらけ出せなくても、誰にも頼れず宙ぶらりんでも、それでも目の前には大切なあなたがいる。
大前さんの勇気ある純真さを堪能できる小説だった。山本亮さん(大盛堂書店)
私自身、『弱さ』を抱えたままで生きていたいと思うことがあります。
『弱さ』を抱えていれば誰かが庇護してくれて、それに安堵して何も考えなくて済むから。
だから強さより弱さの方が最大の防御だと考える時もあるけれど、本作を読んでからは果たしてそうなのだろうかと一石を投じたくなりました。
「チワワテロ」によって炙り出される、「弱さ」を抱えることの是非。安堵の中にある不安。SNS全盛の時代で、弱さ比べが蔓延るいまだからこそ、たくさん読まれて欲しい。
なかなかタイムリーな内容でもあったので、尚のこと刺さったのかもしれません。
誰だって弱さを覚えていいし、誰かにそれを預けたっていい。でも、そのとき、きちんと自分の人生の手綱は握っていたい。
これを両立させる為に、自分はどう変われるのか。
一見して可愛らしくて不気味なチワワテロの謎を追うスピーディかつ二転三転する展開と、くどくない登場人物たちが物語を動かすので一気読みでした。
若者であればこその共感も多いように思います。三編柚菜さん
なんとなくタイトルに惹かれた『チワワ・シンドローム』。チワワのピンバッジを気づかぬうちに取りつけられているという謎の〈チワワテロ〉が全国各地で発生——だなんて、なんなんですかそれはと完全に心を掴まれストーリーの渦に巻き込まれながら夢中で読む。
自分を守るために、チワワのように弱くなりたい。そんな願望を持つ現代人たち。この生きづらい世の中をなんとか生きていくために、ねじれながらも適応し、よじれながらも順応していく。今の現代社会が色濃く描かれた背景の中で、ミステリー要素を楽しみつつも、「強さ」とは? 「弱さ」とは? と考えさせられる良作。
これまたチワワというのが絶妙で、小さくてか弱いものの象徴のようでいて、何やら強気に吠えてかかるようなところも無きにしも非ずなイメージが、「弱さ」を「強み」にしていて、〈チワワ・シンドローム〉とは言い得て妙だ。
弱かったり強かったりしながら、ありのままに自分が自分らしく、この現代を生き抜いていけるように、今、たくさんの人に読まれてほしいと思う作品。大竹真奈美さん(書店員 宮脇書店青森店)
大前さんの新作をいつも楽しみにしています。
今作も胸が詰まりそうになりながら読みました。
「弱さ」のアピールをSNS上でもよく見かける。誰かに寄り添ってもらいたいというそんな思いがあるのだろう。弱さをさらけ出すのは悪いことではない。そのアピールにより繋がった関係性と、その繋がりにより自分はどうしていきたいのか、そんな問いかけを感じました。更家緑さん
強さより弱さが生きやすさに繋がる。強いことに憧れていた自分は、弱いからこそ周りのおかげで生きることができていたんだと気付かされた。
自分の全てを肯定してもらう、甘い言葉に包まれる。それは心地いいけれど、そのままでいると自分がダメになってしまう。守られ受け入れ肯定してもらえるという居心地の良さに浸かってしまったらもう抜け出せない。
わたしは果たして一歩踏み出せるのか、考えてしまった。福原夏菜美さん(未来屋書店 碑文谷店)
本の紹介文から、若者文化がテーマになっているみたいだから、読んでおかないといけないかな、という気持ちで読み始めました。
ですが、読んでいて、琴美が、親友のミアとの関係性のあり方に持ち始めた違和感や疑問が、私も日ごろ感じていることと重なり、強く共感しました。
ミステリーや、社会現象を描き、エンターテインメントとしても楽しみつつ、確かなメッセージも伝わってくる作品でした。
そのままの自分でいい、生きているだけで素晴らしいというのは間違いではないけれど、その言葉に大切なものを奪われてしまっているのではないかと考えるきっかけになるのではないかと思いました。樋渡よしこさん(学校図書館司書)
大前 粟生(おおまえ・あお)
1992年、兵庫県生まれ。2016年、「彼女をバスタブにいれて燃やす」が「GRANTA JAPAN with 早稲田文学」の公募プロジェクトにて最優秀作に選出され小説家デビュー。20年刊行の『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』によってジェンダー文学の新星として注目を集める。同作は23年に英語版の刊行、金子由里奈監督による映画化を果たし、国内外に反響を広げている。21年、『おもろい以外いらんねん』で第38回織田作之助賞候補。22年刊行の『きみだからさびしい』は、価値観が多様化する現代の恋愛を繊細に描いていると各メディアで話題に。他の著作に、『回転草』『柴犬二匹でサイクロン』『死んでいる私と、私みたいな人たちの声』がある。