10月8日（火）から窪田正孝さんを主演に迎えスタートする、NHKドラマ10『宙わたる教室』。メインキャストに続き、キービジュアルや主題歌をLittle Glee Monsterが担当することも発表された。

このドラマの原作者・伊与原新さんは、実際にある定時制高校の科学部から着想を得て、胸の熱くなる青春小説を書き上げた。発売以来、全国から感動の寄せられている本作のドラマ化はどのように進んでいるのか――伊与原さん自身が撮影現場を訪れた。

――実際にドラマ『宙わたる教室』の撮影風景をご覧になっていかがですか。

伊与原　主演の窪田正孝さんはもちろん、岳人役の小林虎之介さん、佳純役の伊東蒼さん、アンジェラ役のガウさん、長嶺役のイッセー尾形さん――本当に皆さんが、私の中で事前にイメージしていた通り、いや、それ以上の雰囲気と存在感を放っておられました。ずっと頭の中にあった『宙わたる教室』の舞台が、まさにロケ現場に現れているように感じましたね。

　科学部の部室のセットも机ひとつとっても、まるっきり小説の世界のままで、藤竹先生のデスクの上に置かれている書籍や資料からは、藤竹先生がいったい何を考えているのかのヒントになるものが……専門家が見れば、これらの原典が何かも分かると思います。周囲に飾られていた恐竜の模型や火星探査機・オポチュニティなども、原作を読んだ方は「ああ、あの場面から！」と頷かれるはずです。

　実はオポチュニティについては、書籍と一緒に並べるディスプレイとして、各書店さんで模型を飾ってくださっていることも多かったのですが、セットで使われているものと同じ金属製のキットを作ってくださった書店がありました。そのお店の方から、「組み立てるのが途方もなく難しかった」という話を聞いていたので、完璧に仕上げている小道具の方は、やはり本職だと感心しました（笑）。

――ドラマでは科学部の実験シーンもかなりの見どころになりそうです。

伊与原　実験装置やデータについても、小説で科学部が行っていた通りのものを作ってくださっていて安心しました。見学に伺った際は、地層に見立てた三色の色砂層を寒天で固めて、それをカットする場面を撮影していましたが、現場での苦労の痕跡があちこちにうかがえて。スタッフの皆さんは本当に大変だったと想像しますが、リアルに魅力的に実験シーンが再現されていたのもうれしかったですね。

　実験というのは論文を読んで手順を踏んでいても、ちょっとしたコツを知らないとうまくいかないことが多いものです。たとえ結果が分かっているものだったとしても、自分で手を動かして試行錯誤することが大事で、そこでうまくいくとやっぱり実験って面白いんですよ。撮影現場でも同じように感じてもらえれば、ドラマを観ている人にもその面白さが伝わると思いますし、高価な最新装置を使わずとも、身近にあるちょっとしたものを使ってやるこんな実験もあるんだということを知ってもらえたら有難いです。

　原作の第1話～第4話まではそれぞれ岳人－藤竹、アンジェラ―藤竹、佳純―藤竹、長嶺―藤竹というように、各話ごと個人個人と藤竹先生に焦点が当たっていたのですが、今回、撮影を見学した第5話以降は、みんなが集まってきて「科学部」が、どんどん出来上がっていきます。神林伸太郎プロデユーサーから伺ったところ、その一体感が撮影現場でも出てきているとのことで、いい雰囲気がはたで見ているだけの私にもとてもよく伝わってきました。

　改めて個人的に思い浮かべていたキャラクターのままに、プロの役者さんが演じてくださっていて、まさに岳人は岳人で、佳純ちゃんは佳純ちゃんだし、アンジェラはアンジェラ……長嶺はいかにも町工場で苦労してきた人に見えました。実験道具だけではなく、高校生たちが研究発表するポスター展示の現場でも、すべてのポスターを一から作ってくださっていて、実際の大会そのものの様子が再現されています。

　作り手の方々のこだわりが詰まったドラマ『宙わたる教室』の放送が、ますます楽しみになりました。

NHKドラマ10　「宙わたる教室」