インタビューほか

「欲望の街」歌舞伎町に明日はあるか

「本の話」編集部

『歌舞伎町・ヤバさの真相』 (溝口敦 著)

──JR新宿駅と歌舞伎町の間に横たわる靖国通り。三途の川にも映ります。

溝口  結界かもしれません。越えるとヤバい。しかし、ヤバさには、それなりの意義がある。健全な歓楽街。これは語義矛盾でしょう。悪が存在して当然。しかし、それ以上に、歌舞伎町は「成熟できなかった街」でしょうか。土地やビルのオーナーから愛されなかった。自らは別のところに自宅を構え、歌舞伎町のビルはテナントに貸す。確実に収益が上がれば、風俗でも中国クラブでも地下カジノでも、なんでもいい。オーナーと実際の経営者が違う。不在のオーナーにも、荒廃の責任の一端があるのでは。〈短期に収奪するシステム〉、これが露呈しています。

──凶悪のイメージが固定しました。中国人マフィアの進出が決定的だった。

溝口   何次かの外国人の波がありました。第一波は戦後すぐの台湾人と韓国人。歌舞伎町の地面の三割は台湾系華僑の所有です。かれらがデラシネ(故郷喪失者)受け入れの基本をつくったのかもしれない。その後、台湾の女性が水商売につき、ややあってタイとフィリピンの女性。コロンビアの娼婦に、金魚の糞のようにくっついていたイラン人。ロシア人と東欧人。最近ではナイジェリア人などアフリカ系の客引きが目立ちます。なかでも劇的だったのは、中国人マフィアでしょう。殺人、誘拐、人身売買……。中国人犯罪が歌舞伎町のイメージを決定づけた。分水嶺は九二年の暴対法の施行。これと時期を同じくして、中国人マフィアが跋扈(ばっこ)。ヤクザのシノギ(営業)の禁止範囲が広がり、力で対抗できない。シマをもつ住吉会、極東会、小金井一家も萎縮。その間隙を縫って中国人マフィアが根を張った。その後、客層が異なり利害が交錯しないとの理由づけで、共存する関係になりました。

──歌舞伎町の未来図は?

溝口  インテリはいまや死語ですが、中間層が格差社会化で埋没した。東京西郊に住むフツーのサラリーマンが、歌舞伎町に寄りつかない。ましてや家族で足を運ばない。今後、かれらがどう変っていくか。これにかかっていると思います。東武と地下鉄の浅草と違い、新宿にはJR、西武、京王、小田急、地下鉄が集中し、西口には都庁や大企業の本社ビルもある。急速な寂れ方はせず、一定の命脈は保たれる。底流には「未完の街」を必要とする層が存在するのでは。成熟や洗練とは無縁の街を、特にアナーキーな若者が欲しているのかもしれません。

歌舞伎町・ヤバさの真相
溝口 敦・著

定価:809円(税込) 発売日:2009年06月19日

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