2002年12月。新神戸発東京行き、最終の新幹線のぞみ車内。
男 関根正敏 ― 三浦知良のマネージャー
女 藤森三奈 ―『スポーツ・グラフィック ナンバー』編集者
女 ぎりぎり最終に乗れましたね。
男 今日のカズの取材もうまくいってよかった。原稿よろしくね。
ところでナンバーが最近取り上げるのは、若い選手ばっかりじゃない? 新し物好きなのは、若い編集者なの?
俺はナンバーのそういうところが嫌いなんだよ。
女 ……すみません。
男 ベテランだってちゃんと生きてるんだ。そういうところを扱って欲しい。
女 分かってます。
男 新しい雑誌の「スポーツ・ヤア!」からもカズの連載企画の提案がきてるよ。どうする?
女 いや、うちでやらせてください。
男 俺だって、ナンバーが一番だと思っているよ。やるんだったらナンバーだよね、やっぱり。
女 対談なんてどうですか?
男 対談は、褒めあって終わりでしょう? つまらないよ。
女 そうですね、何がいいかな……。
男 手紙の交換はどう? 往復書簡。カズがこれまで関わってきた人から手紙をもらう。それにカズが答える。
女 いいですね~。それだ!
男 手紙なら本心が書けるでしょ。昔は嫌いだったけど、今は好き、とか。まだやってるのか、早くやめてくれ、とか。
女 確かに。本音が聞けそう。引退してからはよくある企画ですけど、現役中にやるというのはすごく価値がありますね。
男 そう、引退してからじゃ遅いよ。同時進行なのがいいんだ。
女 メールじゃなくて手紙ですよね。
男 温かさは手紙のほうが伝わるでしょう。世の中の流れと逆行したほうがいい。カズだってアナログな人だし。
女 どんな人から手紙もらえますかね。
男 イタリアで言ったら、バッジョとかバレージ、ブラジルだったらペレからももらえるかもしれない。それから監督。横山さん、加茂さん、トルシエ……。あとは、プライベートの付き合いの人も入れたら? ブラジルでいつも髪を切ってくれていたおばちゃんや、京都のクリーニング屋のおばちゃんとか。
女 それはカズさんの人間関係の幅が出ていいですね。
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