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傷心と喪失の

傷心と喪失の"その後"を生きるために

「本の話」編集部

『ときぐすり』 (畠中恵 著)

出典 : #本の話
ジャンル : #歴史・時代小説

高利貸しの丸三が求めていたもの

――「ともすぎ」では高利貸しとして恐れられる丸三の不思議な友情譚が描かれます。吉五郎のことを考えて、強面の丸三が見せる意外な側面が、とても新鮮でした。

畠中 丸三のような人間が年齢や立場を越えて純粋な友を得ることの難しさについては、シリーズを書きながらずっと考えていました。もしも丸三と誰かの友情があり得るとしたら――と思いながら、この物語を書きました。

――「ともすぎ」で麻之助と清十郎、そして丸三の3人は吉五郎を探しに、舟で両国橋から市谷御門まで向かいます。しかしいざ市谷御門で降り立つと、そこは延々と塀ばかりが続く武家地で、3人は途方に暮れます。

畠中 実はストーリーに関係なく、武家地のことが気になっていたんです(笑)。以前、幕末の番町あたりの武家地の写真を見たことがあって、強烈に印象に残っていました。武家地は両側に長屋塀がずーっと続いていて、なかなか門に辿り着かない。尾張屋敷なら尾張屋敷の塀が延々と続く――その不思議な光景の印象が残っていて、今回の舞台に使いました。町屋と全く異なる風景なので、その違いが出ているとよいのですが……。

――そしてその武家地で聞かされたことが元で、丸三は災難に遭います。災難にあう直前の丸三の言葉「あたしは吉五郎さんの友達ですからね」には、初めて友を得た喜びのようなものを感じました。

畠中 友を得ることの難しさは、丸三自身がいちばんわかっていたことでしょうからね。「友達」は本当に遣いたかった言葉だと思います。

【次ページ】「とき」が「くすり」になるとき

単行本
ときぐすり
畠中恵

定価:1,540円(税込)発売日:2013年05月29日

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