町名主の跡取り息子の麻之助(あさのすけ)、幼なじみの色男の清十郎(せいじゅうろう)、堅物の同心見習いの吉五郎(きちごろう)の悪友三人組が、江戸の下町で発生する謎や揉(も)め事を解決していく人気シリーズ「まんまこと」。二〇〇五年にはじまり、本作『かわたれどき』で七冊目に到達した。
「表題作になった〈かわたれどき〉は、漢字を当てると〈彼誰時〉になります。相手の顔さえはっきり見えない、闇と明るさの間に生まれる、夜とも朝ともいえない一時のことだそうです。以前にどこかで聞いて印象に残っていた言葉なんですが、ふと浮かび上がってきてタイトルになりました」
清十郎はしっかり者の伴侶を得て、長男が誕生。吉五郎は八丁堀(はっちょうぼり)の定廻り同心・相馬小十郎(そうまこじゅうろう)の正式な養子に迎えられた。お気楽者だった麻之助も、自ずと父の仕事を手伝い、持ち込まれる難題と真面目に向きあう日々の中、突然、自分の縁談相手だと名乗る見知らぬ娘が現われ……。
「奥さんのお寿(す)ずさんが亡くなってからだいぶ時間も経って、面影のよく似たおこ乃(の)ちゃんもいよいよ遠国に嫁ぐことになりました。町名主の跡取りとしていつまでも独りでいるわけにはいかないし、周囲もいろいろ縁談を勧めてくるでしょう。今回は麻之助の新たな縁談を巡るお話にしようと考え、妙齢の娘さんたちが次々に登場することになりました」
最初に現われた塗り物問屋・楓屋(かえでや)のおりょうに続き、小十郎の遠縁で料理屋・花梅屋(はなうめや)のお雪(ゆき)、呉服太物所・笹川屋(ささがわや)のお珠(たま)、両替屋・小加根屋(こがねや)の緒(お)りつと、それぞれが家の商売や家族を巡る諸事情や、自身だけで決められない嫁ぎ先についての悩みも抱えている。
「誰が麻之助の相手になるのか、最初はまったく分かりませんでした。でもお話を書き進めているうちに、どんどん主張をしてくるキャラクターというのがいるんです。実際の人間関係でも同じだと思うんですが、時間が経つにつれていろんな縁が重なっていって、気がついた時にはふたりの距離が近くなっていることはよくありますよね。今回も最終的には、麻之助が自ら相手を決めていたという感じでしょうか」
ファンにはお馴染みの両国の顔役・貞(さだ)や高利貸しの丸三(まるさん)に、「この先、ますます活躍が増えそう」という、札差の息子たちも新たに加わって、各話ごと事件は見事解決へと進む。しかし、終盤、野分が江戸を襲い、人々は大水害に見舞われる。そんな中、ある娘御は記憶を失ってしまい――。
「麻之助が心に決めた相手と一緒になれるのか。今後の展開は次作に持ち越しで、もう一波乱ありそうですね(笑)」
はたけなかめぐみ 高知県生まれ、名古屋育ち。二〇〇一年「しゃばけ」で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞、一六年吉川英治文庫賞。「まんまこと」「つくもがみ」ほか人気作品多数。
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