〈「高いモチベーションを持っているのは、むしろ女子」山崎直子さんと伊与原新さんが語り合う「女子と科学」「宇宙への憧れ」〉から続く
NHKでドラマ化され大きな反響を呼んだ『宙わたる教室』。待望の続編となる『コズミック・ガール 宙わたる教室』が刊行されました。さまざまな背景を持つ生徒が集う夜間定時制高校の科学部を舞台に、今回は科学が大好きな女子高校生・飯星佐那が主人公。一度は消滅した科学部を復活させ、ロケットを飛ばすという大きな目標に向かう青春小説です。
文藝春秋PLUS「+BOOK TALK」では、著者の伊与原新さんと、かつて宇宙に憧れた“コズミック・ガール”であり、その夢を実現させた宇宙飛行士の山崎直子さんをお迎えしました。前編では「女子と科学」「宇宙への憧れ」をテーマに語り合った二人。後編では理系女子や定時制高校が置かれた現実や、その先にある希望を考えます。
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日米で違う? 理系女子を取り巻く環境
村井 山崎さんに伺いたいのですが、NASAでのご経験も踏まえて、女性を取り巻く科学の教育環境において、アメリカと日本では違いを感じることはありますか。
山崎 私が訓練していたヒューストンでは、航空宇宙産業の女性従事者は日本に比べると多いんですが、それでも30%ぐらいで、まだまだ少ないと言われています。なので、ガールズ向けのプログラムを積極的にやっていました。「可能性はたくさん開けているよ」と応援する土壌はあったような気がします。
伊与原 学会などでも、欧米には女性のプロフェッサー(教授)が多いなというイメージはありますね。私が研究していた地球惑星科学は男性が多いイメージがあると思いますが、それでも欧米は女性が多い。
ある財団の調査結果を見たところ、女性が理工系の分野に進学しない理由は、学力でも周囲の反対でもないらしいんです。一番大きなファクターは、そもそも女性が少ないこと自体が障壁になっている。例えば看護師さんのように女性ばかりの世界に男性が入っていくときの心理的な障壁と同じです。
そういう彼女たちの背中を押すのは、経験してきた女性の先駆者、ロールモデルとの触れ合いが強く影響するということが分かってきたらしいんです。だから、山崎さんのような方の存在がとても役に立つんだろうなと思います。
山崎 私が宇宙飛行士になったときも、向井千秋さんが道を切り拓開いてくださっていたり、他の国の女性宇宙飛行士もいたりしたので、励みをもらいました。NASAでも少ないとはいえ女性宇宙飛行士は集まっているので、「不可能じゃないよね」ってお互いに励まし合っていましたね。
夜間定時制高校が舞台であることの意味
村井 前作のキャラクターが成長して登場するのも、ファンにはたまらない仕掛けです。
伊与原 前作に登場した科学部員たちのその後が知りたいという声がとても多かったので、今回は指導者がいないので、その代わりにOBたちに活躍してもらおうと考えました。4人集まれば藤竹先生の代わりがある程度できるかもしれない、と。
村井 そんな藤竹先生に会いたいという読者も多いと思いますが、不在にした意図は?
伊与原 一番大きいのは、藤竹なしで科学部ができるか実験してみたかったということですが、もう一つ、彼の不在の理由に現実の夜間定時制が抱えている問題を背負わせることでした。夜間定時制は今、どんどん数が減らされているんです。教育行政側は、不登校を経験した生徒のために通信制高校などを拡充することで、夜間定時制の役目を終わらせようとしています。ですが、外国にルーツを持つ生徒さんや、学び直したいと思っている生徒さんたちの受け皿は夜間定時制以外にありません。そういう問題を藤竹の不在を通じて小説に描くことができました。
「科学って面白い」と思った最初の瞬間
村井 お二人が最初に「科学って面白いな」と思った瞬間はどこだったのでしょうか。
山崎 二つぐらいあって、一つは子どものときにセミが羽化するのをずっと見ていて、きれいな透明のセミが出てきたときに「生物ってすごいな、神秘だな」と思ったことです。もう一つは、読んだ本の中に「天体望遠鏡の性能をずっと上げていくと、最後に見えるのは自分の後頭部だろう」みたいな話があって、「え、どういうこと?」って面白く思いました。
伊与原 僕は昆虫少年でも天体少年でもなかったんですが、強烈だったのはドラえもんですね。地球とか恐竜が出てくるエピソードがものすごく好きでした。藤子・F・不二雄先生はとても科学に対する愛情の深い人で、それが自分にも伝わっていたんだなと思います。
山崎 私も「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」「スター・ウォーズ」の世代だったのでアニメの影響は受けました。メカとか科学的な要素があって、後になって「あれは本当に物理なんだ」と知ったときの衝撃はありました。
これからの「理系女子」を応援するために
村井 最後に、これからの理系女子を応援していくために、社会や大人はどうあるべきか、お考えをお聞かせください。
山崎 いろんな人と出会うことなのかなと思いました。学生のときにアメリカで70代の女性ヘリコプターパイロットにお会いして、「操縦はすごく楽しいのよ」と話してくれて、すごくびっくりしたんです。自分の中に「パイロットは若い男性」というイメージがあったことに気づかされました。自分ではバイアスを持っていないつもりでも、自然とあるのかもしれないなと。
伊与原 興味をこちらから強制することはできませんが、女子生徒さんたちの中に興味がある子はいっぱいいるでしょうから、自然に任せればいいと思うんです。ただ、先が見通せない時代なので、「この先に就職はあるんだろうか」といった心配があるのかもしれません。
そういう不安に対して、理系の側が「心配ないから来ればいいよ」と言っていくべきだし、「こんな道があります」「この人のケースはこうでした」というのを広く提示してあげることですよね。そうやって不安が取り除かれれば、自然と女子生徒さんは増えていくだろうと思います。
村井 ありがとうございました。『コズミック・ガール 宙わたる教室』は現在発売中です。ぜひ手に取っていただければと思います。今回のゲストは伊与原新さんと山崎直子さんでした。どうもありがとうございました。
伊与原・山崎 ありがとうございました。









