インタビューほか

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「本の話」編集部

『花の鎖』 (湊かなえ 著)

驚くような繋がり

──人生って、自分で決めているように思えても、実は一見関係ないことの影響を受けているし、思いがけないところで繋がっている。そんなことに、改めて気づかされます。

 ほんとうにそうだと思います。大学の友人の幼馴染が結婚したときの馴れ初めが、コンパに行った後にラーメンを一緒に食べたら、男の人よりも早く食べて、汁まで飲み干して、こんな豪快な女性は見たことないと相手が惚れこんで、交際が始まり結婚したんです。その話を聞いた七、八年後に私も結婚して、旦那さんとラーメンを食べながらこの話をしたら、「あれ、その話、聞いたことがある」と言い出して、よくよく話してみると、旦那さんの幼馴染だったんです。しかも、うちの近所に住んでいた。いまでは仲良くさせてもらってます。小説とは全然関係ない話で済みません(笑)。けど、そういう驚くような繋がりって実際にあるんです。

──『花の鎖』は、美味しそうな食べ物が出てきますね。例えば、「梅香堂」のきんつば。

 近所の和菓子屋で売っているきんつばが、おいしいんですよ。

──モデルがあるんですね(笑)。

 年に一回、祭りの日に買うんです。その日が来ると、一年たったことを実感できます。普段はお店の奥で焼いているんですが、祭りの日はお店の前で焼いていて、その焼き立てを箱に詰めてくれるんです。

──生クリームと餡こが混じったきんつばが出てきますが、本当に売っているんですか。

 いや、ないです。クリームと餡こが混じったドラ焼きを食べたことがあったので、きんつばでもいけるかと思って書きました。

──小説の中には、お花がたくさん出てきますね。

 トルコキキョウとりんどうが出てきますが、この花にはちょっとした思い出があるんです。大学生のとき信州のユースホステルでアルバイトをしていました。連泊したお客さんの中に、素敵な方がいたんです。ある日、その方が散歩から、トルコキキョウとりんどうを両手に抱えて帰ってきました。近隣の農家の方が切り分けてくださったそうです。素敵な人は花も貰うんだ、なんて感心したことを覚えています。そういう花にまつわる記憶って、みなさん何かしらあるんだと思います。うちにも小さな花壇があって、そこに、枯れてしまった黄色いバラを移植したら、咲き始めたんですよ。しかも、咲くと何かいいことが起こるんです。賞を頂いたときも咲きました。けど、去年の夏前に枯れて、花を付けなくなりました。これを見て、何だか私も一区切りついたということかなあと思ったんですね。いまは、赤いバラを植えています。

──新たにお花のことを調べたわけではなく、身近に覚えていたエピソードが小説の中に溶け込んでいるんですね。

 そうですね。今まで自分の人生に登場した花のエピソードを入れるなら、この本だと思ったんですね。山で綺麗だと思ったコマクサも、植物園でみるとそこまでの感動はなかったり、見る場所でも感じ方は違うし、誰と一緒に見るかでも違ってくる。そういう日常の中にある花のエピソードを書き込みました。

花の鎖
湊 かなえ・著

定価:1400円(税込) 発売日:2011年03月09日

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