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クラシック音楽の大衆化に貢献した山本直純

クラシック音楽の大衆化に貢献した山本直純

文・写真:「文藝春秋」写真資料部

 口髭と黒縁メガネがトレードマークの音楽家、山本直純は昭和七年(一九三二年)生まれ。父は作曲家・指揮者の山本直忠。幼くして音楽の英才教育を受け、高校時代は斎藤秀雄に指揮法を学ぶ。同時期の斎藤門下生に小澤征爾がいた。

 東京芸術大学作曲科に入学。一学年上で打楽器科にいた岩城宏之と知り合い、生涯無二の親友となる。二人は指揮をしたい一心で学生オーケストラを結成。山本は念願の指揮科に転じる。

 しかし、眼病にかかり、視力が低下。楽譜の読み込みに困難を覚えるようになり、オーケストラの指揮に不安が生じた。大学卒業後は、テレビや映画で幅広く活動を行う。「オーケストラがやって来た」(TBS)を企画し、自ら出演、タレントとしての才能を発揮するなど、一般大衆へのクラシック音楽の普及に大いに貢献した。

 饒舌でユーモアにあふれた話しぶりは定評があった。

〈指揮者はいいもんです。楽隊のクラリネット吹きだかが、なにかのとき、棒を振ることになった。振ってみると意外にやさしい。で、長老の指揮者に「簡単じゃないですか」といったら、長老いわく「そうだ、しかし、他人に言うなよ」〉(「オール讀物」平成元年=一九八九年三月号より)

 写真はこのとき撮影。

 映画「男はつらいよ」のテーマ曲やTBSラジオの「小沢昭一の小沢昭一的こころ」の音楽を担当し、長く親しまれた。また、シンプルで明快なCMソングも数多く手掛け、エールチョコレート(森永)のCM「大きいことはいいことだ」のフレーズは流行語となり、日本船舶振興会のCM「火の用心のうた」もひろく受け入れられた。

 平成十四年、急性心不全のため亡くなる。

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