書店の謎

書店員になるにはどうしたらいい?
書店員さんはなぜ、この仕事を選んだの?

文: 「本の話」編集部

知っているようで知らない書店のことについて、全国各地の書店員さんが顔出しで回答する「10人の書店員に聞く<書店の謎>」。今回は、書店員になりたい女子中学生の質問にお答えすると同時に、書店員になった理由を答えてもらいました。

書店員は始めから本が好きなわけじゃない!?

どうして書店で働きたいと思ったのですか?(東京都 30代 女性)

 

山本善之(くまざわ書店大手町店)

 初めは本が好きで常に囲まれていたいと、本屋か図書館で働きたいと思っていました。しかし決定的なエピソードは無く、将来を明確にイメージできないまま文学部へ進学、本屋でのアルバイトと司書資格のための授業履修でお試しを開始。結局その生活の中で意識したのは、小売の楽しさでした。担当を持ちたい・自分で棚を作りたいという欲求が膨れ上がり小売業に就職。就職先は手芸やホビー用品・文具など幅広い商品を扱ったお店で、それぞれの商品の掛率の幅に驚きました。何年か夢中で働く中で、自分の中でさらに理想の棚を作りたいという思いが湧いてきました。職場近くの本屋で買い物をしているとき、書籍は掛率がほぼ一定で返品もできるため、お客様の求めるもの、自分の売りたいものが素直に棚に落し込まれているのではないか? そもそも毎日商品が入荷して景色が変わるお店はないぞと魅力に改めて気付き本屋へ転職活動を開始しました。

 

筒井陽一(リブロ名古屋店)

 ある時、かつて自分が「ロッキン・グオン」を初めて買った本屋のアルバイト募集ポスターが目に飛び込んできて、ああここにしよう働こう、と思ったから。買ったのは高校生時分です。表紙はテレンス・トレント・ダービーでした。それまでミュー○ックライフやらポッ○ギアやらを悶々と読んでた身からすれば、その誌面内容は精神的黒船来航気分。全て「紹介」ではなく「批評」に読めたとか。若いな。そして自分の背伸び欲求に余裕で応えてくれたその店の品揃えと店構え(地下二階)は記憶に強くインプットされたのでした。その後紆余曲折あり現在に至る。私も今こそ「ロッキング・オン」及びジャパン読者からは巣立っておりますがレジに持ってきてくださる若いお客様への接客は私情が入って丁寧になること限りないという話。

 

栗原浩一(あゆみBOOKS仙台青葉通り店)

 私の場合すごく本が好きで本屋で働き始めたわけではなく、学生時代にアルバイトを探していたときにたまたま書店の募集があったのがキッカケです。都内のデパートに入っている書店で最初は売場ではなく仕入れ(事務所の中)で、入荷した商品を箱を開けてジャンルごとに振り分けたり、返品を作ったりとかなりの肉体労働でした。そこから売場に出てレジ・接客を覚え、社員になって担当を持つようになり、本を売ることの面白さと難しさを知り現在に至っています。

 

高橋佐和子(山下書店南行徳店)

 最初は接客が出来るなら何でも良かったんです。喫茶店にショップスタッフと連続で採用試験に落ちてしまい、偶然埼玉にある大手書店で採用されました。レジ要員だけのはずが、人が足らないからと児童書のメンテナンスを手伝うようになったんです。けれど、片付けても片付けても目の前で荒れていく本を見ていて悲しくなって「何で大事に読んでくれないんだろう」と接客が雑になってしまいました。悶々とした日が続いて苦しかったです。接客がやりたかったはずなのに……と。ある日、お子さんに「ねぇ、この本は他の誰かが買ってくれるものなんだけど、もう少し大事に読んでくれると嬉しいなぁ」と目線の高さになってお子さんに話しかけてみました。その時はぽいっと本を床に置かれて、とても落ち込んだんです。しかし、数日たったとき、背中をトントンと叩かれました。振り向くとその子が「お姉さん、大変そうなので手伝います」と声をかけてくれて、本を整頓してくれました。「ありがとう、すっごく助かる」と言うと、むすっとしていたのに、にこぉって笑ってくれて……そこから、「本屋って面白いかも」と思えるようになり、文芸書の担当になってからは、さらに世界が広がり、色々な奇跡を感じて本と文と人の力に魅了されっぱなし……という経緯があります。

 

内田剛(三省堂書店神田神保町本店)

 自分にもっとも向いていない職業と思ったからです。本は好きでしたが人と接するのが極めて苦手で。それを克服するのは就職しかない、と決意しました。あれから20数年……いまだ修行中の毎日です。

 

富田結衣子(文教堂書店代々木上原駅店)

「働きたいと思った」と言うよりは、中学生くらいの時からなんとなく、将来自分は本屋で働くんだろうなー、と思っていました。もちろん、元々本を読むことが好きだったというのもあります。

 

岡一雅(MARUZEN&ジュンク堂書店梅田店)

 最初は「バイトするなら好きな本に触れられる場所で…」という、今考えると本当に漠然とした軽い気持ちで選びました。大学卒業後、就職浪人が決まった時です。「就活が終わるまで……」のつもりだったものが、1年が2年になり、バイトから定時社員(契約社員)になって、担当者として新書選書を扱うことになった頃から、書店で働くと言う事について考えが少し変わったように思います。担当者として仕入数を決め、棚のメンテナンスをこまめにやりながら、展開や追加のタイミングを計って手配する。担当者として責任を背負う様になったからでしょうか。丁度担当になった時期が、新書ブームと呼ばれる新規参入とベストセラーラッシュというのも大きかったと思います。新刊本についてのマスメディアやネットでの反応をうけた店頭での動き、はたまた9・11のような事件勃発に因る需要の発生にいち早く対応できるか。一方では時流に関係なく読んでもらいたいものをどう売るのか。そういった本を商う方法だけでなく、今まで学ぶ事がなかった分野について読むキッカケも自分にあたえてくれたり……。気付けば10年余、相変わらず売場で右往左往していますが、本を売ることの面白さ(と同時に怖さ)を体験したことが、今も書店で働いているモチベーションになっているのだと思います。

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