――――聞くところによると、担当編集者が試作品をなかしまさんのところに持って行ったとき、あまり出来はよくなかったようですがおいしそうに食べてくださったとか。
なかしま 小さいときに私がおやつを作ると、家族がとにかく褒(ほ)めてくれたんです(笑)。失敗してぺちゃんこになっていても「おいしいね」と。もちろん片付けなどをきちんとしないと怒られるんですが、作るということをいつも喜んで褒めてくれたから、その環境はよかったなと思います。
――――巻末には「失敗百科」という頁があります。とても役に立つのですが、どういう発想でできたのでしょうか。
なかしま 編集者と「事典みたいなお役立ち頁もあるといいよね」と話していて、失敗を含めたほうが初めての方にも役立ちそうだし、読んでいて面白いかもなと。原因やどうしたらいいかというのを事典形式で紹介したいなと思いました。 お菓子作りにどんどんはまっていくと、当然上手に作りたいと思うようになります。読者の方から「生地に穴があいてしまう」「膨らまないんです」とか質問を受けることが多いのですが、わたしからするとそれだってきっとおいしいし、見た目のきれいさよりも、作っているときの楽しさ、形はいまひとつでも、「家のおやつは楽しくおいしければいいんじゃない!?」と思えるんですよね。売り物ではないですし、私も商品としてのお菓子を教えるようなつもりではないんです。作っていたら穴もちょっとくらいあきますし、焦げたりしますよ。失敗すらおやつ作りの楽しみとして欲しいんです。
――――ところで『おやつですよ』はビニールカバーで料理本としては小ぶりな判型で、すこし変わった造りですね。
なかしま 作って下さる方を思い浮かべていったら、こんな風になりました。キッチンに置いて大きすぎない判型、水濡れに強いビニールカバー、開きやすい造本。それから作業の途中で頁を繰らなくてもいいようにレシピは見開きで完結するような構成になっています。写真は自然光、それにデジタルではなくフィルムで撮っていただきました。器も、スタッフで持ち寄って、普段から使っているものばかりです。
――――家の居間、お茶の間にいるような優しい感じがするのは、だからなのですね。そしてこの本で伝えたかったことは何でしょうか。
なかしま お菓子作りはハードルが高いと思われているのがとても残念で、思ったよりずっと簡単で特別な材料も道具もそんなにいらずに気楽にやれるんだよということを伝えたいなと思いました。 レシピの原稿を書くときに気をつけていたことがあります。料理本、レシピ集特有の言い回しによりかからず、誰にでもわかるように、かつシンプルに説明しようということです。レシピそのものもシンプルにしています。でも、シンプル、簡単イコール手抜きでは決してありません。単純だけれどもおいしいものを選んでいます。ごはんは作るけれど、お菓子作りは面倒くさそうだなと敬遠していらっしゃる方にこそ、ぜひ作っていただけたらうれしいです。本を買ってくださった方が「おやつ」を作って、この本は完成するんです。
――――メニューひとつひとつについたなかしまさんのコメントや思い入れが面白くてエッセイ的な楽しさもありました。自分でも作ってみたくなりました。
なかしま ありがとうございます。小さい頃に家族で過ごしたおやつの時間が蘇ってくるような本になっていればいいなと思っています。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。