美容整形外科医としての戦い
──美しさに関して言えば、條子の、「神様は間違っている。美しさは、もっと不公平に配分されてこそ、公平なのだ」 という言葉もとても印象的でした。そして四人の女性たちに施術する美容整形外科医の晶世(あきよ・51)にとっては、美しさの問題はまた様相が異なってきますね。
唯川 そうですね。自分の技術で美しい女性を作り上げることは晶世にとってキャリアの一つとなりますが、「バケモノ」と呼ばれるような涼香を手がけることは、客観的に見ると失敗にカウントされてしまうかもしれませんから。
──主観と客観の板ばさみにならざるをえない晶世はどうすればよいのでしょうか。
唯川 その手術が「本人」を納得させるものなのか、「他人の目」を納得させるものなのか、美容整形外科医として戦いながら判断してゆくしかないでしょうね。だから四人の女性と晶世はずっと戦ってきたともいえます。
──序盤では冷静に見えた晶世も、物語が進むにつれて複雑なバックグラウンドが明かされて、徐々にその怪物性を露わにしていきます。四人の女性たちもそれぞれに美の欲望をエスカレートさせるうち、やはり次第に怪物的な存在になってゆきます。結末はその怪物たちが結集するとてもショッキングなものになっていますが、これは最初から決めていたものなのでしょうか。
唯川 結末はあまり考えていませんでした(笑)。でも物語を書きすすめるうちに、これはホラーになる、という予感を持ちましたね。欲望のまま美を求めていったら、いわゆる普通の美容整形では満足できなくなることは予想できましたから。
今回は各女性ごとに視点を転換させながら書きましたが、この人物の視点からどう驚かせてやろうと考えて書くのは、とても楽しかった。読む方にとってエンディングはショッキングなものかもしれませんが、それも含めて怖がって頂いたり、共感して頂ければとても嬉しいですね。
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