インタビューほか

美の追究の果てにあるもの

「本の話」編集部

『テティスの逆鱗』 (唯川恵 著)

美しさとは何か

──涼香は登場する四人の女性の中で一番頻繁に手術を受けて、「バケモノ」と呼ばれることさえあります。しかし手術を繰り返し受けることについて、彼女はとても強い哲学を持っています。 「多くの女たちが望んでいるのは、他人から見て美しく見えるようになることよね。でも、私は他人からどう思われようと構わない。何を言われても平気なの。耳に入らない。それはね、私は美しさの判断を人任せにしていないから。私からすれば、いつも他人の目を気にして整形を繰り返している女の方が、よほど病気で不幸よ」   涼香のこの言葉は自分の美への欲望を際限なく肯定すると同時に、読むものに「美しさとは何か」ということを強く問いかけていると思います。簡単に答えられる問いではもちろんありませんが。

唯川  確かに美しさの定義は、とても難しいですね。「人から見られて美しいと思われたい」と考えて美容整形をする人はもちろんいるでしょうけれど、その場合「美しい」と思うのはあくまで他人で、美しさを判断する主体は自分ではありません。ならば涼香のように自分で自分を美しいと思うことさえできればよいのかというと、確かに主体は自分の側にあるけれど、一概に正しいとはやはりいいきれませんね。

──確かにそうですね。

唯川  以前インターネットで美容整形をする前とした後の顔画像を大量に見たことがありました。私には圧倒的に美容整形をする前の画像のほうが美しいと思えたのですが、「した後」のほうがずっときれいだと思っている女性もいました。

──でなければ画像をネットにアップしたりはしないでしょうからね。

唯川  はい。だから私にとって「美しさとは何か」という問いに対して、無理矢理答をだすのではなく、「よくわからないもの」と割り切って、さらには自分の価値観が変ることを前提にして、自分なりに探し続けるのが唯一納得できることだと思っています。 

テティスの逆鱗
唯川 恵・著

定価:1600円(税込) 発売日:2010年11月13日

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