- 2012.09.20
- 書評
外国人の視点から見た日本
文:ファブリツィオ・グラッセッリ (建築家)
『イタリア人と日本人、どっちがバカ?』 (ファブリツィオ・グラッセッリ 著)
ジャンル :
#ノンフィクション
「逆向きのマルコ・ポーロ」になる旅
M ところでこの本には「ビアンキ家」という、北イタリアに住む架空の一家のエピソードが、頻繁に出てきますよね。その狙いは何ですか?
G 世の中に、欧州債務危機を扱った本はたくさんあります。でも、そうした状況の中で現実に生きている「人間」にスポットを当てた本はありません。そこを描くために「ビアンキ家」の人々を登場させたんです。彼らは架空の人物ではありますが、その会話や行動、考え方や、日々の暮らしのディテールには、現実にイタリアの多くの家庭で起きていることを、リアルに反映させてあります。
M 大勢の「ビアンキ氏」が、現実のイタリアに、本当にいるのだと。
G そう。この本を読んだ人は、まるで「魔法のドア」をくぐり抜けたように、気が付くと、イタリア人の家のキッチンの中にいる、というわけです。そして、イタリア人が夫婦げんかしたり、仕事に行ったり、友達と飲んだりしている現場に、立ち会うことができるんです。それは、東洋から西洋へと向かう「逆向きのマルコ・ポーロ」になる旅です。
M そして、最終章ではその中の登場人物が、日本に来る。
G そうです。そして、読む人は、外国人の視点から見た「日本」の姿を目にすることになるんです。だから、イタリアや、欧州の債務危機に関心がない人が読んでも、すごく興味深い本になっていると、保証しますよ。
M 結構、コミカルな場面もたくさん出てきますよね。
G 笑いとユーモアが持っている力は、大きなものです。直視するのがつらいような事でも、笑いの力を借りれば、まっすぐ見つめることができる。この本も、テーマはまじめなものですけれど、読んでいる間は、ニヤニヤしたり、思わず声を出して笑ってしまうこともあるでしょうね。電車の中で読むときは、注意した方が良いかもしれません(笑)。
M この本の献辞の中に「すべての日本の子どもたちに」という言葉がありますが……。
G イタリア人も日本人も、大人たちは、バカというか、愚かなことをして、国を危機に陥れることになりました。でも、子どもたちには、素敵な未来と笑顔を与えたい。そのために、出来ることは何か、真剣に考えたい。読者のみなさんと、そんな「思い」を共有できれば、私としては本望です。
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